好きです。好きなんです。
俺の大好きで大事で愛しているひと、は、酷く美しい。
綺麗な目を長い睫毛が縁取っていて、色白の肌は男にしておくには勿体ない程で、艶々の黒髪にちょこんとティアラなんか乗せちゃって、細身の体にぴったりの服なんか着ちゃって、なのに覆い隠すようなそのマントが嗚呼忌まわしい。
「デリ」
はいなんでしょう。
「見過ぎだ」
それはすみませんでした。余りにも日々也さんが綺麗だったのでつい見とれてて。
俺がそう言うと日々也さんは呆れた、とでも言うように俺を一瞥した後、また視線の先を本に戻した。
日々也さんの部屋は俺の部屋とは比べ物にならないほど豪華で、そりゃあ小さきながらも一国の王子なのだから当り前なのだが、お世辞にも居心地は良いとは言えない。無駄に広いし。
でも近くに日々也さんが居ると言うだけで嬉しくなる、幸せになる。ずっとこの部屋に居たくなる。
日々也さん日々也さん
俺ね貴方が好きなんですよ
大好きなんですよ
結婚を前提にお付き合いしたいんです
「すまない」
ほら何で謝るんです。貴方は俺が好きだと言うといつも謝りますよね。
「それは無理なんだ」
それも何度も聞きましたよ。
「すきだよ デリ」
じゃあ何でそう言うんでしょうね。
俺よりも幾分か背丈の低い日々也さんが、床に座ったままの俺をやさしく抱きしめる。
本当は知ってる、全部知ってるし解ってもいる。
一国の王子と一大臣の子である俺。
そして何より、同性。
年が近いからと言って遊び役を任せられた時からもう15年以上経つ。
大人に近づくごとに、いかに俺と彼が結ばれない運命かを理解していった。
「デリ…」
ああ愛しい人、いとしいひと。
大丈夫です俺はずっと貴方が大好きです。
いつか貴方が他の女と結ばれようとも、ずっと近くにいるから。
だから、泣かないでください。
涙を見るのが何より辛いんだって、そろそろ覚えてください。
とある宮廷 | ナノ