平和島静雄が、あの超人的な力をコントロールできるようになった。
そんな噂を俺が知ったのは、職業柄そう遅くはなかっただろう。

ぶっちゃけた話、俺はシズちゃんが嫌いではなかった。
いつも喧嘩をすればそれは「嫌い」「死ね」の応酬であるが、本心からそう思っているわけではない。
まぁ死んで欲しいのは若干事実なんだけど。
俺は彼の理屈を超えた力を、なんだかんだで愛していたのだ。

予想通りに動く人間たちの中で、俺を一際楽しませてくれるからだろうか。
それに力を除いたら只の人間味のある奴だし、からかうだけでも面白かった。
だからこそ俺は池袋までわざわざ出向いてからかって、ある程度で逃げて、あぁあの憎しみと悔しさと嫌悪にまみれた顔を見るだけで酷く気分が高揚する!

人とは考え難い力を持った、ちょっと短気な男。
俺はそいつを、化物と認識していた。
人ラブ!で名高い俺でも例外はあるものだということだ。

とにかく、俺はシズちゃんを其れなりに愛していた。

その噂を知るまで。


「つまんないなぁ」
シズちゃんは街で俺にあってもそんなに追いかけてくることはなくなった。
今までは会えばすぐに喧嘩に発展していたのに、今では静かに「帰れ」と言われるのみ。手なんて出してこない。
まあ怪我が少なくなるのはいいことなんだけど。
そんなシズちゃんは面白味なんてなかった。

俺がシズちゃんに興味を失うまで、そう時間はかからなかった。

俺が愛していたシズちゃんはそんな男じゃない。
俺が愛していた化物はそんな人間らしくない。
もっと理性なんかなくって、暴力的で、短気で、でもそんな自分が大嫌いな
そんな男だった。
化物だった。

化物じゃないシズちゃんなんて、もう、いらない。

ねえ。
だからシズちゃん。

「ずっと好きだった」、なんて。

そんなこと言ってももう遅いんだよ。


俺が愛したのは「化物」だったから
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