短いです

え?そうですね、丁度一週間くらい前だった気がします。

あの、黒いコートの綺麗な男の人、そうそう短髪の!……あ、折原さん って言うんですか、へー。
で、その折原さんが丁度一週間くらい前に、池袋で道の端からバーテン服の人をずっと眺めてたんですよね。
あんなに綺麗な人があんなところで何をしているんだろう、って、気になったんで覚えていたんです。
…?はい、バーテン服の人ですよ。金髪でサングラス掛けてて、すごく背が高くて、割とかっこいい顔の人でしたけど。それが何か?
……本当ですからね、何を気にしてるのかわかんないんですけど。

それで、折原さんは顔色がすごく悪くてくまも凄くて、ふらふらしって路地裏の方に入って行ったんですね。
体調が悪いんだろうなってことが一目で解かるくらいなのに、そんな場所に行って大丈夫なのかなって思ったので、俺、ちょっと追いかけてみたんです。
そしたらその人、少し入ったところで蹲っていて、震えてたんですよ。

吃驚して 大丈夫ですか、体調悪いんですか、って聞いたら逆に折原さんも吃驚したみたいで、ばって凄い勢いで振り向かれたんです。
その時、あの人泣いてたんですよね。
目は全然充血してないのに涙だけ、つーって流れていて。
怖かったけど、うん、綺麗だったなぁ。あの人。

で。
そんな感じの目で俺を見て、「大丈夫」、って。
「大丈夫ですから、ほんとに」って。

いや、どう考えても平気じゃないじゃないですか。
でも大丈夫、って言ってたんですよね、うん、よく解からない。

それから?
いや俺って初対面の人に、そこまで強く何かを言えるような性格じゃないんで。
はぁそうですか、って言って、ふつうに家に帰りましたよ。


で、ちょうどこの間の事故の話ですよね。

事故の数分前に、男の人が何かをさけんでいるのが聞こえたんですよ。
助けて、とかそういう叫び声じゃなくって、何て言うのかな、あれは………あっ、そうそう、雄叫びっていうか、うん、そういう感じです。

それから直ぐに、折原さんがすぐ近くの道を走っていくのが見えて、それを誰かが追いかけてるのも見えました。
なんか、細長いものの先に丸いのがついたような、えっと、何ていうんだろうアレは……。
まぁ、そういうものを持った人に追いかけられてたんですよ。
…あ、あと、その追いかけていた人、バーテン服で金髪でした、多分。
折原さんが見ていた人と同じ人だと思うんですけど、違うかな…。

とりあえずその話は置いといて、折原さんは信号を渡ろうとしたみたいで、横断歩道の方にかけて行ったんです。
折原さんがわたり始めたのは、青信号が点滅してた時だったと思います。
すぐに折原さんがわたってる間に赤色になって、でもほら、池袋の横断歩道って長いじゃないですか。
当然、周りからはクラクションも鳴ってましたよ。
でも一気に駆け抜けようとした折原さんを追いかけて、バーテンの人も飛び出しちゃって。

その時、でしたね。

横からでっかい大型トラックが曲がってきて、そのまま、バーテンの人だけ巻きこまれていって。




え、折原さん?
事故が起きた直後は見ていなかったんですが、しばらく茫然とそこで立っていて、気がついた時にはもう其処にはいませんでしたよ。

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