縁辿り 縁願 | ナノ




縁願神社



縁視之比売命を主とする山の中に位置する神社。
古くは旅人が「無事に家族に会えますように」などの願いが積もった碑でしかなかったが、ある時その願いが形をもち神となった―これが縁視之比売命である。


ある日たまたまその碑に旅人がもたれかかり休息をとっていた。縁視之比売命はその旅人に声をかけ「私の家となる社を作っておくれ。そうしたらばお前には良縁が迷い込み悪縁は断ち切られようぞ」と言った。
旅人はそれを了承すると山をおり仲間に訳を説明した。仲間はそれを信じ翌日から旅人とともに社を作るため山へ向かった。
それから大分時間がたったある日、社は完成した。小さな社だったが縁視之比売命はこれに満足した。

「お前たち、今日までご苦労だった。お前たちにはいい縁が結ばれるだろう」
「私共にはもったいなきお言葉、感謝いたします。今まで拠点としていた小屋は撤去いたしますので今しばしお待ちいただきたく思います」

神社の裏には小屋があった。旅人たちが神社を作るにあたって根城にしていたものだった。旅人たちは仕事を終え小屋は必要なくなった。なにより神のある場所に小屋は不適切だと、そう考えた。しかし縁視之比売命はこう言った。

「よい。お前たちの頑張りの跡ではないか。私が赦そう。そこにあったとて邪魔にはなるまい。雨や雪の日には動物がそれで雨をしのぐだろう。山に住まうものがそれを利用するやもしれぬ。あったところで不都合はあるまい。これも一つの縁である。
お前たちは家に帰り家族との時間を大切にせよ。今日(こんにち)までの働き、大義であった。」

縁視之比売命はそう告げると社へと姿を消した。
社は小さいものであった。だが縁視之比売命は満足であった。己を構築している人々の想い、信仰、それを視認できるのがこの神社であったから。

旅人たちは言う通り各々帰路へとついた。
後に神社には時折人が訪れ、酒や米が置かれたり、良縁に恵まれたものが挨拶に来たり、またあるときには神社を掃除しに来るもの、またあるときにはあの旅人が訪れた。


小さな社だが、当時の人々にはある種の憩いの場、願いの場となった。
縁視之比売命は人々に大切にされた神であるという証が、この神社である。




…というのが今日(こんにち)まで伝わってる逸話である。
事実と異なる箇所もあるかもしれないがそれは縁視之比売命だけが知る事実である。

が、一つ確かなのは神社は創られ、状態や逸話から見るに大切にされていたということである。






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