Artificial Respiration




頭一つ分弱、身長が伸びた梓君はキスをする時、腰を折る。
去年位は同じくらいだからちょうどいいですねって笑ってたのに。
いつの間にこんなに男の人になったんだろう。
瞬きする間も惜しいくらい、梓君を見ていたはずなのに、そこに居るのはまるで知らない人みたい。

何度目かのキス。
目を閉じると花火が弾けるみたいに、チカチカする。

「あず、さ、くん。」
「はい。」
「も、ストップ。」
「もうですか?僕はまだまだ足りないです。」
「ずっと・・・してるじゃない・・・。」
「そうですか?」

少しだけ離れて、口で息をする。
水槽を泳ぐ金魚みたいに、ぱくぱくして。

ただ離れたと行っても、少しでも動けば唇がまた触れてしまいそうなわずかな距離で、思い切れない。
声が自然と小さくなって、ただでさえ頭に血がのぼってるのに、それがまた私の脳を酸欠にさせることになる。

でも、梓君と居るときは、いつもこう。

「梓君て・・・好きだよね・・・その、キス・・・。」
「はい。先輩にいつでも触れていたいですから。」

当たり前ですと笑顔で答える梓君。

「男の人のキスは所有欲をアピールするものなんだって、ね?」
「そうらしいみたいですね。」
「え?」
「ま、先輩が全部欲しいですから、間違いじゃないですよね。」

あまりにもあっさり肯定されて、反撃は虚しく空振りに終わる。

「ねぇ、先輩?」

甘さと意地悪が混ざったような声。
先ほどから唇こそ触れてはいないけど、梓君は首の角度を変えたりと、普段している最中は目をつぶって見ていないその行為を晒されてるみたいで、すごく恥ずかしい。
その動きに反応して開く私の唇も、もう梓君のもののようです。

キスをしても、していなくても、やっぱり苦しいのね。

「マーキングしてもいいですか?」
「・・・知ってたんだね、その心理学。」
「当然です。先輩、息たくさん吸ってくださいね?噛みつきはしませんけど、今から食べちゃいますから。」
「たべ・・・。」
「待ちませんからね。」

まるでライオンに食べられてるみたいな錯覚と獣のようなキスで拘束されて、抵抗をすべて排除し、大人しく捕食されることになる。

そして私は、梓君の吐く息だけで息をする。



ーーー
2012/3/30

捕食者




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