光を集めて




最近私たちの間では、不思議なやり取りが続いている。

最初は陽日先生経由から保健室にくるようにと呼ばれてから。
散乱とした保健室には人気はなく、不在を浮き彫りにするような白い紙が一枚。

『掃除を頼む。
時間があれば、保健室に寄るからお茶も入れておいて欲しい。』

A4用紙に、メッセージは上部に書かれていた。
それはもう達筆に。
おとなのひとの文字。

いつも星月先生が座る机で少し考えてからペンを走らせた。
出来るだけ丁寧に。

これが筆談の始まり。

『お疲れさまです、星月先生。
最近は忙しいのですか?あまり、無理しないでくださいね。
睡眠時間はちゃんと取ってください。保健室で寝るのは良くないと思います。
ところで、保健室による時間もあまりないみたいですが
3日前に掃除したのにどうして散らかっているのでしょうか?
お茶はポットに入れておきます。
夜久』

『掃除、ご苦労様。
散らかっている件についてだが、あれは散らかってるのではない。
だが、直獅が保健室を訪れたときに、汚いと騒ぐものだからこうして夜久に掃除を頼んだ次第だ。
直獅に片付けを頼むと、勝手が分からなって支障が出そうだからな。
俺的には決して汚れてもなく、利便性を重視した配置になっているんだよ。
根本的に間違っていから、改めて認識しておくように。
俺がここで寝るのは今に始まったことじゃないだろう。
ポットはどこに閉まったんだ?見つからないが?
星月』

『星月先生
一人で寝ているのは不用心ですよ?

わかりました。
私が星月先生の勝手が分かる片付け方をしていたのが、悪かったんですね。
これから変えていきますね。
早く星月先生が片付けをしてくれますように。

すみません、ポットは陽日先生が梨本君達と屋上庭園で夜天体観測をするからと
持って行ってしまったそうです。
お湯かと思って注いだら、あまりにも渋いお茶が出てきてびっくりしたと言っていました。
夜久』

『夜久
そうか。わかった。
お前のお茶が出てくるとは、直獅もさぞ驚いただろう。

それと、片付けの仕方を変えられては困る。
星月』

『星月先生
どういう意味でしょうか?
何か悪意を感じるのは私の気のせいでしょうか?
お返事によっては、お暇をいただきます。

だって今のままじゃ、せんせい片付けしないじゃないですか。
夜久』

『夜久
もう書くスペースがないから、簡潔に言う。
今日はそのまま保健室で待っていなさい。』

小さな星の形をしたアメと、ぎっしりと詰まった用紙の最後の小さな隙間にはそう書いてあった。
星月と書ききれなかったんだろうなと、想像がつく。
少しだけ、最初とは違う文字の雰囲気に思わず微笑んでしまった。

これが私たちの1週間のやり取り。

「ふふ、紙、新しいのにすればいいのに。」

裏面まで続いている会話を読み返して、この城の王様を待つ。
両手で包んで、机に頭を伏せると
カーテンの隙間から溢れてくる傾いた沈む太陽の光が筋となって差し込んでくる。

片付けすぎないのは先生が寂しくないように
勝手が良く思えるのは、わたしが先生をよく見ているから
ひとりで寝る先生が寒くないようにわたしはこの暖かい光を手のひらに集めてあげたいと思うのです。



ーーー
2012/3/9

私が居た証をなにか残せたら。





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