息が凍るような寒い日。
身を寄せ合って一晩を過ごした。
思った以上にそれは暖かくて、人という温もりに安堵する。

肩から落ちかけて、まるで心臓に頭を垂れるような月子。
朝日に透けた、ミルクティーに蜂蜜をたっぷり注いだような
甘い色をした髪を掬う。

うぅん。と一度唸って、思わず手を引いた。
起こしてしまっただろうか?
恐る恐る覗き込んで見ると、それはもう幸せそうな顔してスヤスヤと規律の良い寝息をたててる。

どんな夢を見てるんだろうか。

「かず・・・き・・・かいちょ・・・」
「!」

先ほどまでにやけ顔だった月子の顔が、歪む。
俺の名前を苦しそうに呼ぶ顔が耐えられなくて、少しでも穏やかになってくれればいいと祈りながら
空いている腕を延ばし、頭を撫でる。
毛布から出した手が冷気に包まれ、指先から熱が消えても、優しく優しくただ触れる。

「・・・ん。」
「起きたか、よだれ垂らしてるぞ。」
「え?!す、すみません!」

じゅるりと音がするんじゃないかと思う勢いで、口をぬぐう月子。
その姿が可愛くて、思わず吹き出す。

「嘘だ、嘘。」
「わ、笑って・・・!」

真っ赤な顔をした月子は下をうつむき、ストレート。
それを手のひらで包むように受け止める。

「え?一樹会長!」
「ん?」
「手が冷たいです!」
「あ、あぁ。」

月子のパンチを受け止めた手を、ばつが悪くなり毛布の中に引っ込めた。
ただ手が冷たいだけなのに、その表情は青ざめていた。

「なんつー顔してんだ、別に死んでもいないだろ?」
「だって・・・びっくりしたんです・・・。」
「体育館、冷えるなもんなぁ。」
「わたし、暖かかったです・・・。」
「おしくらまんじゅうの真ん中だからな。」
「会長は外側だから冷たいんですか?寒くないですか?」

お前が隣に居て、暖かくて、だから寒くはなかったよ。

「年寄りの冷や水っていいますし・・・。」
「お前・・・だんだん颯斗に似てきたな・・・。」
「ふふ、さっきのおかえしです。」


冷たい指先



俺がお前に与えてやれることは多くはない。
俺は目が覚めて隣にお前の顔があって、それだけで俺は生きていけるよ。


ーーー
2012/3/6

報われない、ガンジーのような愛。
寝ても覚めても




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