目隠し鬼、手の鳴る方へ
 



少し前から気づいてたことがある
俺はそれを知らないふりをして過ごす。

受け入れることはできないから
それでも心は正直で漏れることもある。

だから極力二人では居ないようにしてる。

颯斗と翼が居ることはごく自然なことだから。



本当は自制出来ないのが怖いだけなんだがな。


「・・・会長?一樹会長?!」
「あ?」
「目を開けたまま寝てたんですか?いくら呼んでも応えてくれないから・・・」
「あぁ悪い悪い、考え事してた。」


ふうとため息をついて、月子特製のまずい茶をコトリと置く。

「眠気が覚めそうだな。」
「もう!さっき一樹会長がまずいお茶!って言ったんですからね。」

ずずずと一口。
まずい。

「颯人と翼は?」
「さっき見回りに行きましたよ。」
「なに!俺を置いてか?!」
「話しかけても気づかないから、ふたりで行ったんですよ?」
「そうか・・・。あいつら帰ってきたら説教だ。」
「ふふ、逆にされちゃうんじゃないですか?」

ゆらりと長い髪を揺らして前の机に付く。
カリカリとペンの走る音。

静かだな。
避けていたはずなのに、こんな時間が続けばいいのにと
望む気持ちが往生際の悪さを露呈する。

「月子」
「は、はい。」
「ちょっとこっち来い。」

姿勢を起こしてソファーの空いたスペースをたたく。
おずおずと席を立ち、指した場所に腰を下ろす月子。

「なんですか?」

ただいつもより近い距離に居るだけ。
それだけで月子の頬はふんわりと赤らみ始める。
甘栗色の前髪の隙間から、瞳が揺れてる。

その長い前髪をすくうと、少し困った顔をした。

「一樹会長?」

この愛おしい気持ちも
俺が受け取れないお前の気持ちも
全部俺が呑み込めちまえばいいのにな。

「私、だいじょうぶですからね?」

瞳をゆっくり閉じて、そして俺を見据えた。

「心配、しないでください。」

次の瞬間には手からすくい上げた髪がすり抜け
ソファーがギシっと軋み、月子の腕が頭を包む。

柔らかく温かい。
いつだってもがいてるところにお前は簡単に救い出してくれる。
ずっと、そうずっと昔から。

自然と背中に手を回すと、少しだけビクリと体を震わした。

勇気、出してやってんだろうな。
俺の理性をぶっとすのばっかり上手くなりやがって。

「月子。」
「はい。」
「胸、もう少し育ってくれるといいなー。」
「!!!!」

それはもう凄まじい勢いで俺の頭を吹っ飛ばす。
バランスを崩し、ソファーから落ちた。
流れる視界に映るのは、天井と真っ赤になった月子の顔。

「い・・・ってぇぇ、月子!なんてことんだ!」
「かかか一樹会長が悪いんです!!!」
「っふ、涙目・・・。」

泣くのか怒るのか、どちらとも言えない表情が可愛らしい。
しっかりと反応してくれて良かった。

あのままだったら、俺ちょっと自信ない。


「あー!ぬいぬいがこけてるー!書記がいじめて・・・?」
「何して・・・一樹会長。」

扉が開くと、ソファーから転がってる俺に
ソファーに膝立ちして前にならえの月子。
一見、月子が俺を突き飛ばして落した図なんだが
月子の表情をみた翼と颯斗は軽蔑するような眼差しで俺を見る。

「ぬいぬい、書記を虐めたなー!」

翼は駆け寄るやいなや、月子をぎゅっと守るように抱きしめる。

「・・・・。」

颯斗は無言でミニ黒板に向かって歩く。
それも早足で。
浮かぶのはもちろん黒い笑顔。

「は、颯斗!待て!訳を聞け!!」
「聞くに値する理由はあるんでしょうか?」
「あるある!な!月子!」
「・・・。」
「だあああああ!そこで黙るな月子!とにかく、なんだ、颯斗待て!」
「特にないようですね。さぁ翼くん、月子さんの耳をふさいでくださいね。」
「ぬいぬいさー!・・・って俺耳栓してない!」
「「ぎゃあぁあああああ」」


そうやって月子を守ってほしい。
なんて言ったらきっと変な顔されるんだろうな。

もう少しだけ、傍に居させてほしい。

大事なところで泣かせてばかりでごめんな。

いつでも俺はお前の幸せを願うよ。


喜んで
怒って
哀しんで

どうか、ずっと、笑って


ーーー
2012/3/5

winterは他のルートのぬいぬいがとてもかっこいく見えます。




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