Intuition near conviticon
 





「髪、長いのと短いのどっちが好き?」

暑いから切ろうかなって思ってと
先輩は小さく笑った。
自分のことを相談するそれに、小さな照れを感じてる。

「可愛いですね。」
「え?」
「あ、いいえ。」

笑顔を取り繕う。
正直先輩の外見はあまり気にならない。
もとい、気にしていなかった。
僕から見ればとても綺麗で可愛い人であって
それ以外の価値観は意味がなかった。
だから、世間一般的にも先輩が綺麗な人であることに
気づくのはしばらくたってからだった。

もともと女性に、他人に興味を持ってなかったし
ここは特殊な環境だし
誰かと彼女を比べる機会は著しく乏しかったから。

そもそも彼女が彼女であればなんでもいい。
そういったら先輩は怒りそうだけど。

「どうして?」
「え?」
「どうして、僕に聞くんです?」
「そ・・・れは・・・。」
「理由を教えてくれたら、答えてあげます。先輩。」

温度計のようにみるみるうちに赤くなる頬が
なによりも気持ちを高揚させる。
言葉よりも先に、応えてくれる。
だから、意地悪、したくなっちゃうんですよね。

「・・・ふっあはは!先輩、嘘です。ごめんなさい、可愛くってつい。」
「梓くん!」

くるくる変わる表情は、一層強く僕に彩を見せつける。
今度はどんな表情を見せてくれるのかな。
早く僕の物になればいいのに。
そうすれば、気持ちを試すようなことしませんよ。

いや、彼女のことだから僕のものになっても、彼女は彼女のままなんでしょうね。
ふわふわして捕まらない先輩が悪いんです。

「僕のこと、好きなんですか?」

耳元で囁いてみた。
先輩は耳元を手で押さえて、ペタリと尻もちをついた。

「先輩!大丈夫ですか?」

押さえていない耳も赤い。
揺れてる大きな瞳と真っ赤なトマトのような頬。
少しだけ開いてる濡れてる唇。
泣きそうな表情に、声にならない息が小さく零れる。
嗚咽に近い、吐息。
なんだかいやらしいなぁ。

「び、びっくりして・・・。それ、大丈夫って言ってる顔じゃない・・・・。」
「あ。すみません、つい。」

肩をすくませて謝罪のポーズをとるが、自然に弛緩した口元を睨みつける。
仕方ないですよ、可愛くて可愛くて仕方ないんですから。
手を差し出して、少し背の高くなった僕は
簡単に先輩を引き寄せて腕の中に収める。

仕方ないな。今回は特別ですよ。

「長い髪のほうが好きですよ。なんだか誘惑されてるみたいで。」

栗色の髪にキスをした。
すべてが愛おしい。
もし、今と違う外見だったとしても
僕はあなたを見つけてきっと執着する。

今の気持ちの驕りじゃない。
これは、確信とも似た直感。



ーーー
2012/3/5

梓に翻弄されたい。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -