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【Hello Lost Devil's. -6.5】


「今日行きたい場所はここと、次にこっちね」

レッドグレイブに来る前に買っておいた街の地図。
テーブルに開いたそれを使って、今日の移動先を説明する私。と、その隣でVが頷く。
…タブレットよりは見やすいかなと思ったんだけど。

「ああ。待っている時間は適当に過ごしている」
「ちょっと長くなるかもしれないから、先に謝っておくわ…。あっ、でもね!朝ごはんとお昼のお店はもう目をつけてあるの」

地下鉄から出てすぐの交差点に──…、

私が地図を指しながら説明をはじめると、…なんだかやけに顔の近くで相づちの気配がします。
少し屈んで地図を覗き込むVの、低く耳許で掠れる声に私の意識も独占される。
……ついでにちょっと…あの、ほんとに照れるから離れてくれないかな…。

ぐっと勇気を振り絞ってお願いしようと顔を向けると、ちょうど同じタイミングでVも身体を離してくれた。
…これって私の自意識過剰…よね?
言わないでよかった…。

「…そういうことだから、期待しててね」
「お前が行きたい場所なら付き合おう」

Vはどこか含みのある微笑みで応える。その余裕、やっぱりイケメン。
全体的に線も細くて色白のVだけど、逆にそこが儚げで目が離せないのよね…なんて噛みしめていると、道はもう覚えたと地図を閉じて返してくれる。ありがとう。マメだわ。

動いた拍子に前髪が落ちてきて、Vは少し邪魔そうにかきあげた。
この仕草もVがよくしてること。
なのになぜか、私はつい反射的にVの髪に手を添えていた。それこそ女の子同士がヘアスタイルのアドバイスをしあうみたいな感覚で。

数日間ずっと一緒に過ごして慣れてしまったことと、私の生来の遠慮のなさというか、雑さというか、図々しさというか…、そんな無意識。
私の指はVの黒髪を押さえてるし、Vは少し驚いたように見おろしてるし。
どうにか誤魔化すために私は平静を装って必死に言葉を探した。

「やっぱり。ピンで留めてもVなら似合いそうね」
「……」

良かったら使ってみる?なんて動揺を抑えて手を離す。でもなんか…Vの反応がないんですけど。…やっぱり嫌よね、軽々しく触られるのは。
すすすと身体を引いて距離を取って。
私が何事もなかったように次の話題を続けようとした時、Vが動いた。

私の髪をよけて両頬をふっと挟まれる。
Vの手のひらの体温がじんわりと伝わってくる。
力が入ってるわけでもなくて、ただ添えられているだけなのに、私は呼吸も瞬きも忘れてただ見惚れる。

それを心から楽しむように。
視線を合わせて身を屈めて、ペリドットの瞳が優雅に細まった。

「──仕返しだ」

私はこんなに威力のある悪戯をしたつもりなんてないし。そもそも悪戯でもないのに。ああ、でも、
どうしよう。朝からお腹がいっぱい。


(拍手ありがとうございましたっ)