生まれて初めて、バネさんと顔を合わせるのが辛いと思った。

俺は踊り場で双眼鏡を作らなくなった。校内をうろうろするのもやめた。部活にはギリギリの時間に行くようになった。部活が終われば誰より先に帰るようになった。

バネさんとは、必要最小限の会話しかしなくなった。



俺、考えた。

こんな関係をどうにかしたくて、どうにかする方法を、一つだけ思い付いた。

始まりが無いから終わらない。だったら俺が始めたら良い。
そして、バネさんが終わらせてくれたら良い。



久しぶりに、バネさんと一緒に部室を出た。
校門を過ぎるまで不恰好な世間話をしながら歩いた。
不意に会話が途切れたときに、いよいよ俺は覚悟を決めた。

「バネさん」
これ以上、
「好きだ」
苦しめるのは嫌だから。



俺のこと振ってくれ、バネさん。



「とうとう言われちまったなあ」
バネさんはいつもと同じ笑顔を見せた。
「俺も言わなきゃならねえんだな」
きっと答えを用意していたんだろう。
「悪い、ダビデ」
変に遠慮なんかしない。
「お前のこと、そういう風に見れない」
バネさんらしい返答だ。



呆気ないと、まず思った。

俺は好きな人に告白して、そして断られた。
俺の片思いは終わった。同時に、俺たちの微妙な関係も終わった。
あとは戻るだけだ。
バネさんの相棒に、親友に戻る。

たったそれだけのことだ。たったそれだけのことを。

出来ないくらいに好きなんだと、改めて思い知った。



初めて言葉にした気持ちは、わりと簡単に形になった。

わかっていたはずの答えは、予想していたものよりずっと重かった。








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