いつからそうだったのか。様子が違うと気付いたときはもう遅かった。

バネさん、一体いつからだ。
いつからビーム、出さなくなった。



部活の後、バネさんを海に誘った。
バネさんはちょっと困ったように頭をかいたけど、何も言わず先に部室を出た。

切り出し方がわからずに、黙ったまま浜辺を歩いた。
バネさんは俺に背を向けて、ずっと遠くを眺めて立ち止まった。

ようやく、沈黙が終わる。

「ダビデ」
海を見つめるバネさんは
「俺、どうすりゃいい」
俺の知ってるバネさんとは違った。



俺はずっとバネさんを見ていたけど、その理由を言葉にしたことは一度も無い。

「お前とは今まで通りでいたいのに」
それでもバネさんは知っていた。
「考えるほど上手くいかねえし」
それでもバネさんは笑ってくれていた。
「ぎくしゃくしちまうし」
それがどんなに難しいことか
「わかんねえ」
俺は知ろうともしなかったのに。



詰まらせながら吐き出される言葉が、落ち込んで丸くなった背中が、辛そうに頭を抱える仕草が。
バネさんの全てが、散弾銃のように形を変えて、俺を撃ち抜く。

押し付けてばかりで気付かなかった。
だってバネさん優しいから。
俺を否定しないでくれるから。
苦しめているだなんて、思いもしなかったんだ。



何か言わなきゃ。
焦るように口を開いた。
喉がからからに渇いて、まともな声なんて出せそうになかった。



海に溶けるように、夕陽が沈んだ。
辺りは薄暗くなって、バネさんの背中は余計に遠く感じた。

俺が、バネさんから相棒を奪った。
俺が、バネさんから親友を奪った。



ごめん、バネさん。

好きになって、ごめん。








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