どうした、長太郎。
なんかあったのか。
言ってみろよ。
聞いてやるからよ。
宍戸さんの声が響く。
耳元で、そんな勘違い。
実際は、俺の脳内で。
俺は都合の良いように、宍戸さんを造り上げている。
いつまでも甘えているだけなんだ。
頼りにしないと決めたのに。
対等でありたいから、並んで歩きたいと思ったから、一人で強くなりたいと思ったのに。
俺は宍戸さんが居なければ、根本的な何かが不足してしまうんだ。
後輩を率いていかなきゃならないのに、日吉にも迷惑をかけてばかりで。
「一生やってろ」
現状はどうだ。
並ぶどころか、追いつくことすら叶わない。
「腑抜けって言ったんだ」
むしろ後退しているじゃないか。
ベッドに潜ると腰から背中を伝って、ぞくぞくと音を立てて何かが上ってくる。毎晩のことだ。
寝返りを繰り返し違うことを考えて、でも結局はテニスのことを考える。
毎晩同じことを考えて、毎晩答えは見つからないまま。
何が出来る、こんな俺に。
何をすべきだ、今の俺は。
いっそのこと。
全部やめちゃおうかな。そうすれば、考えることをしなくて済むから。
馬鹿だなぁと、心底呆れた声が聞こえた。
ちょっと時間が過ぎた頃に、自分の口から漏れた言葉だったと気付いた。
それが出来るなら初めから、
こんなに苦しいわけがないのに。