私としたことが。何てことだ。
(…眼鏡を忘れた…)
今朝、寝坊をしてしまったことから一日は始まった。生まれて初めて寝坊をした私は急いで意識を覚醒させ、五分で身支度を済まし、そして全速力で高校まで駆けた。足の速さに自信はあるから何とか間に合った。
一息つき、授業中に使う眼鏡を取り出そうとした時に気づいたのだ。眼鏡を忘れてしまったことに。
(これでは板書が見えにくい!)
「おはよう三成ー」
(しかも今日に限って体育がない…一日中板書をする授業ではないか!)
「珍しいなーぎりぎり登校なんて」
(何故私は寝坊をした? そうだ…昨夜家康と電話をしたからだ!)
「おーい、三成ー?」
「家康ううううっ!」
「うわあ!」
ぐるりと後ろを向くと、丁度そこには家康がいた。今日のセーターは紺色か。紺色もいいが、昨日のベージュの方が似合うと思う。だが今はそんなことどうでもいい! 力強く丸い肩を掴むと、教室が何だかざわついた。
「貴様のせいだ、家康!」
「な、何が?」
「貴様と夜分遅くまで電話をしたから、興奮して眠れなかった! だから私は今朝寝坊をしてしまった! 責任をとって今日の板書を全て後で写させろ! いいな!」
「…は、はい…」
しおしおと赤くなる家康。何故赤くなるのだ。まったく。
とりあえず今日の板書はこれで何とかなった。たまには授業に集中しないのもいいだろう。
「朝から何だあのバカップル」
「いや、馬鹿なのは石田だけだろ…」
眼鏡は身体の一部です