(…十時?)
時計の針が指す時間に驚き飛び起きる。こんな時間まで眠ったのは生まれて初めてだ。いつもは日の出と共に起きているのに。
くらりと目眩がした。駄目だ。まだ身体は睡眠を求めているらしい。枕に顔を埋めながら、昨夜は何時に寝たのかを思い返した。
(…そうだ)
(緊張のあまり眠れなかったのだ…)
目線を横に移すと、間抜けな顔で眠っている恋人の姿が見えた。普段は一つにまとまっている髪は降ろされ、まるで女のようだ。しかし身体は逞しい男そのもので。私は昨夜、その力強い腕に抱かれたのだ。
思い出すだけで顔から火が出そうだ。あんなに激しいなんて。あんなに大切に扱われるなんて。何もかもが初めてで、痛みさえも愛しかったように思う。まさか自分が、とも思ったが。
「…慶次殿も疲れているのだろうか…」
形の良い唇にそっと触れる。柔らかくて温かい。ここから出る言葉は、私に愛を教えてくれる、優しい言葉だらけだ。
「…すき、でござるよ…」
「…俺も」
「!」
突如動いた唇に驚く。ゆっくりと瞼が開いた。緩やかに微笑む慶次殿とは真逆に、私の表情は羞恥でみるみるうちに歪んでいく。
「い、いつから起きていたっ!」
「んーと、幸村ががばっと起き上がった時から」
「…!」
「嬉しいねえ。やっと、好きって言ってくれた」
慶次殿の腕が私の身体を包む。そういえばお互い裸のままだったが、不思議と恥ずかしくはない。寧ろ重なる体温が心地良くて安心する。じわじわと込み上げてくるこの感情は、愛しさだろうか。
「好きだよ」
「…うむ」
「あ、言い忘れてた」
軽く口づけをしてから、慶次殿は笑って私の髪を撫でた。大きな掌が慈しむように髪を撫でてくれる。この瞬間が一番幸せを感じるのだ。
「おはよう、幸村」
(ああ、今日もまた)
(この人と過ごす愛しい一日が始まった)
グッドモーニン