誰か、俺を最低だと罵ってくれ!

「…いや、お前は普通だろ。寧ろおかしいのは真田の方だ」
「…でもさあ、やっぱりさあ…!」

今朝目覚めたのは五時半。まだまだ眠れると二度寝を決行したらとんでもない夢を見てしまった。
大好きな彼女を、抱く夢を。

自慢じゃないが俺の彼女はとんでもなく初心だ。子どもはコウノトリが運んでくる、もしくはキャベツ畑で拾うものだと思っているくらいは性に関する知識がない。一体どんな教育をしてきたんだと思ったが、彼女を取り巻く環境を見たら納得してしまった。彼女はがちがちの箱入り娘だったのだ。

告白した時も、初めて手を繋いだ時も、最初は顔を真っ赤にされて破廉恥! と怒鳴られ殴られた。それでも俺は彼女が好きだから、一緒にいられるだけでよかったから耐えた。そうしているうちにやましい心は消えていった、はずなのに。

「元親っ! 俺のことを殴ってくれ! 夢の中とはいえゆっきーをめちゃくちゃにしてしまった俺を!」
「何お前マジかよ、賢者にでもなりてえの?」
「ゆっきーに嫌われるくらいなら俺…キスもセックスも何も出来なくていい…」
「…慶次…」

ぽん、と軽く肩を叩かれ、元親の方を見る。大きく開けられた胸元が不思議といやらしくないのは見慣れているせいか。
元親の大胆さを欠片でいいからゆっきーに分けてくれないかなと漏らしたことがあったが、それを聞いていた毛利さんに、あいつは案外奥ゆかしいとドヤ顔されたことは忘れられない。

「任せな」
「え?」
「俺が真田に男女の付き合いってもんを教えてきてやる」
「え、ちょっ待ってっ元親あ!」

ひらりと見えそうで見えないスカートをなびかせ颯爽と元親は教室を出ていった。俺の静止も聞かずに。
ゆっきーと元親って面識あったっけ。あるけど顔見知り程度だったよな。一体何をするつもりなんだ!

「あわわわ…どうなるんだよ…!」




ヘタレと初心の恋模様



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