俺の飼っていた鳥が、今朝死んだ。突然だった。昨日まであんなに元気だったのに。俺は一人で泣いて、冷たくなった小さな友を庭に埋めてから、また泣いた。

チャイムが鳴り、涙も拭わず扉を開けた。誰が来るかわかっていたから、涙は拭わなくてもいい。

「…朝からどうした」
「…毛利ぃ、…!」

鳥が死んだことを伝えると、珍しく毛利は目を大きくした。
そうか、辛いな。そう言って毛利は少し背伸びして俺の頭を撫でた。その優しさに涙腺は更に緩み、玄関ということを気にもせず、俺は自分より小さい身体にしがみつくように泣いた。

庭に移動し、線香はないから仕方なく蝋燭をたてる。二人で静かに合掌。瞼は熱いが涙はようやく止まった。

目線を隣に移す。そこには淡々と涙を流す毛利がいた。涙はまるで窓をつたう雨粒のように、するりと一筋流れ落ちる。その様子を見た時、俺は言葉を失った。
次の瞬間思ったことは、こいつも泣くことが出来たのか、という失礼極まりないこと。

はあ、といつもより重く長いため息を吐いてから、毛利は俺の方を見た。涙は拭われていない。タオルを差し出すと、いらんと言われてしまった。

「…鼻が痛い」
「泣きゃ痛くなるもんだろ」
「やはり、慣れぬことは疲れる」

慣れる慣れないの天秤にかけるものだろうか、泣くことって。俺にはわからないが、こいつにとって泣くという行為はそういう対象なのだろう。

あいつは毛利にもよく懐いていた。俺達が喧嘩した日なんか、二人の間を飛び回ったりして、それを見ていたら喧嘩なんてどうでもよくなったりしたこともあった。俺達にとってあいつは、幸せを運ぶ青い鳥みたいな存在だった。でももう、あの甲高い鳴き声を聞くことはない。

「なあ、毛利。俺より先に死ぬなよ。俺、一人は嫌いなんだ」
「そうか」
「孤独ってのは、一番辛いもんだと思うんだ」
「…そうだな」

細い腕が俺の身体を引き寄せる。いつもは冷たい体温が、何故か今日は温かく感じた。どちらともなく交わしたキスは、涙のせいでしょっぱかった。ぶつかりあった睫毛は、柔らかく濡れていた。



君が滲んで見える




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