今日の俺、一位だったんだ。

「…は?」
「星座占いで」

朝の挨拶もなしにそれか、と思わずため息を吐いた。クラスメイトの慶次殿はいきなり謎めいた発言や行動をするから対応に困る。嫌いではないが、少し、苦手だ。悪い人でないとは、わかっているけれど。

「ため息吐くと幸せ逃げちゃうんだよ?」
「…ならば某の吐いた幸せを、今日一日幸せであろう貴殿がより有頂天であれるよう、差し上げよう」
「え、何それ。ははっ!」

腹を抱えて笑い出す慶次殿に、やはり俺はついていけなかった。さっきの発言に笑える要素などあっただろうか。いや、ないと思う。
慶次殿の、何を考えているのかわからない所が苦手なのだ。

まだ席の主が登校していない事を確認すると、慶次殿は俺の隣に座ってきた。にこにこしている顔はとても無邪気でまるで子どものようだ。

「ゆっきー何座?」
「そんなもの、気にした事はないでござる」
「じゃあ誕生日教えてよ! それですぐわかるから」

しぶしぶ誕生日を伝えると、慶次殿は更に嬉しそうに笑った。携帯を取り出し慣れた手つきで文字を打っていく。よくもまあ、あんなに早く操作が出来るものだ。俺なんかメールを打つのがやっとだというのに。

突如近づく顔。慶次殿の長い髪がふわりと揺れる。その度に香るのは名も知らぬ香水の匂い。

「俺とゆっきー、星座占いの相性悪いわ」

やはり。と言おうとしたがその三文字は出て来なかった。目の前で笑っている慶次殿を見たら、そんな言葉は消えてしまったのだ。

「…なのに何故笑っているのだ?」

普通相性が悪いと出たら、笑ってなどいられないだろう。しかも相手を目の前にしているなら尚更。やはり何を考えているのかわからない人だ。

「だってさ」

ふ、と真面目になる表情に、俺の心臓がどきんと跳ねる。これはきっと、急な変化に驚いたせいだろう。

「いきなり最高より燃えるでしょ?」

これからどんどん仲良くなろうよ。
そう笑う慶次殿の顔を、何故だか俺は直視出来なかった。しばらく鼓動がうるさくて、身体も熱くて仕方なかった。



星占いの導き




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