承太郎からしてくるキスはまるで噛み付いてくるようだといつも思う。





試験前の勉強を一緒にしないかと承太郎を家に誘ったのは僕だった。その日両親が旅行に出掛けてていないことは事前に伝えていた。承太郎が気を使ったりしないように。ちりん、と窓の風鈴が風に揺れて鳴って、じっとりと汗ばむような暑さを僅かにだけど癒してくれた。暑さのせいか気怠そうにしている承太郎のこめかみから微かに汗が流れていた。冷房を入れればいくらかマシになる筈だと思い、窓を閉めた。エアコンから流れる涼しい空気が優しく首筋を撫でて行ったけど、そんなにすぐには部屋全体は冷えない。

「休憩しようか」

お互いに集中力が途切れてきてるのを感じてシャーペンを動かしていた手を止めた。承太郎は汗を含んだ前髪を掻き揚げて、ぱたぱたと床に落ちていた団扇で自分の顔の辺りを扇ぎ始めた。それは余計に暑くなるよと、白い団扇の地紙に淡い水彩で描かれた朝顔の模様を見つめながら思った。風鈴も団扇も承太郎の家のような日本家屋の方が似合うだろうに、この家は二階の窓も含め外装は全て洋風な作りになっていた。冷たい物が食べたくなって一度、階下へと降りて承太郎と僕の分のアイスをふたつ取ってきて再び部屋へと戻る。冷房が効き始めて心地よい空気になっている。窓の方を見て珍しくぼーっとしている承太郎の首筋にまだパッケージに包まれたままの棒アイスをひたと当てると、大袈裟なぐらい承太郎の体がびくっと動いた。可笑しくて笑っていると頭をわしゃわしゃと犬でも撫でるみたいに撫で回される。

…好きだなーこうやって承太郎といるの。

承太郎の肩にもたれかかって、アイスのパッケージを開けてぺろぺろと舐めていると執拗な程強い視線を感じて承太郎の方を見上げた。

「……おめェはいっつもその食べ方か?」

「逆に聞くけれどアイスって他にどんな食べ方があるんだい?」

「そんなに必要ねぇのになんでもれろれろ舌で転がす癖やめろ」

……そんな事していただろうか。でもアイスって本来舐めて減らすものだよ?温度が生温くなって、やっと初めて味が浸透していくように出来てるんだからゆっくり舐めて減らすべきだ。だから指摘されても食べ方は変えなかった。
アイスは承太郎の方が早く食べ終わってしまったようだった。残り半分くらいになったのをゆっくりと舐めていると不意に顎を掴まれた。向きを変えさせられたかと思うとまるで噛み付くようなキスで唇を塞がれる。冷たくなってる舌に唇に承太郎の温かい舌がざらりとした感触で触れた。

「……ん、まだ、食べてる」

「せいぜいゆっくり食っとけばいい」

そうしれっと言いながら、制服のボタンをひとつ外し首筋に歯を立てる承太郎。まだ試験の範囲全部見直せてないんだ、このままそういう雰囲気に流されたくない。後ろから抱き締められて身動きは取れない。続いてうなじを耳朶を食む唇にびくびくと変な反応を示してしまう。

「汗の味するな」

「……っ、だったら舐めるのやめてくれないか」

「アイス溶けてるぞ」

ぽた、と溶け落ちたアイスが僕の丁度鎖骨の辺りに零れ落ちた。ぺろ、と承太郎の舌が丹念にそれを舐めとっていく。もうアイス舐める事なんて出来なくてぽたぽたと零れ落ちた白い液体になってしまったそれは胸元まで染み込んで制服の白いシャツに染み込んでしまった。

「承太郎…?…あっ、…」

シャツのボタンを更にひとつ、ふたつと外していって前をはだけさせられる。承太郎は僕の腕を掴んで床へと押し倒しアイスを取り上げ、三分の一程残ってる冷たいアイスを乳首から腹筋の辺りまで塗りつけるようにして動かした。冷やっとして気持ち悪く、甘いバニラの匂いが充満してくらくらした。碧色の承太郎の瞳が優しそうに細まって液体の付着した部分を舐め上げ、じゅるりと卑猥な音を立てながら吸い上げていく。

「勉強…しようよ…ッ」

「休憩してんだろ」

「あっ…承太郎、嫌だ…っ」

「……わざと二人きりにしてくれたんじゃなかったのか?」

承太郎は身を起こして、まるで叱られた子供のようなしゅんとした表情をした。その顔を見てはっとする。そうだ。承太郎と二人になりたかった。周りに誰も居ない空間で甘えたりべたべたしたりしたかったんだ。だから両親が旅行に出掛けていない今日、承太郎を家に呼んだ。でも急にあちこち舐め回してくるから吃驚してしまった。それは承太郎も悪い。床から身を起こして、すっかり威勢を失くしてしまった承太郎の頬にキスをした。驚いたような反応が返ってきてそれがとても愛しく感じた。

「勉強終わってからゆっくりしよう?」

まるで大きな黒犬のように僕の頬を舐めながら、承太郎は僕の言葉に嬉しそうに頷いた。ああ今なんて優しい時間なのだろうと、染み染みと感じて涙が滲んだのをばれないように拭った。後で全部全部好きなようにさせてあげるからもう少し待っていて、甘く噛み付く僕の愛犬さん。










2015.5/28
承太郎×花京院は大犬×子犬だと思ってる。









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