髪が膝元に触れる柔らかい感触がした。這うようにして伏せた頭は俺の股間へと寄ってくる。履いているジーパンのチャックを歯で下ろして中の下着をずらし、陰茎をペロペロと舐めるのが見えて、息が漏れる。やがて先端から根元までゆっくりと咥えていく、その恍惚とした表情で一心に舐め上げる。従順そうに奉仕を続ける花京院の頭を撫で回して褒めてやる。



そんな夢を見て目が覚めた朝の気分の最悪さといったらなかった。






「承太郎?」

「………なんだ」

何も知らない花京院は学校の校舎の壁にもたれ俺の隣に座り込んだ。手にはお弁当箱とお茶の入ったペットボトル、お昼を一緒に食べようという事らしい。いつもの事だけれど今日はあまり近くに寄りたくなかった。最近ヤってねぇ。今朝見た夢といい欲求不満が爆発しそうになっていた。

「今日はやけに目を合わさないね。何かあったかい?」

「………………………何もねえ」

「長い沈黙だなぁ。何もないとは思えないんだけど」

お弁当のおかずを口に運びながら花京院はそう言った。そのまま今朝見た夢の事を伝えてやったって構わないけどどうせこいつ怒るだろう。顔真っ赤にして何でそんな夢を見るんだって言うに決まってる。夢なんて深層心理や願望の現れだからコントロール仕様がないが今朝のはひどい。視覚的に直球過ぎる。花京院のやや広めの口元に目をやると釘付けになって視線を剥がす事が出来ない。口元に運ばれていくおかずが羨ましいぐらいだった。

「承太郎卵焼き食べたいのかい?ひとつやろう」

「いや、いい」

「遠慮しなくていいさっきからずっと見てたじゃあないか」

「遠慮と自重はしてる」

「ほら、やっぱりそうだ」

俺のお弁当箱に卵焼きを乗せて花京院は満足気に笑った。遠慮と自重は卵焼きに対してではなくお前に対してだと言ってやりたい。玉子を食むと甘く出汁の香りがしてとても美味かった。


「ご馳走様でした」

ぱたん、と閉じられるお弁当箱。花京院は今は気が緩んでるらしく、周りに人もいないのも手伝ってか肩にもたれて甘えてきた。珍しくて可愛いなと思うと同時に困り果てる。色んな衝動を抑えて石になったつもりで動かないでいることに徹していた。花京院は色々と何か取り止めのない話を楽しそうに話していたが何一つ頭に入ってきやしなかった。髪から香る花京院の家のシャンプーの香りやボディソープのほのかな匂いが鼻腔を着く。同じ男の筈なのにいい匂いがするのが不思議でたまらなかった。

「承太郎は今日はあんまり喋らないね」

詰まらなさそうに花京院が言って立ち上がろうとした、その腕を思わず掴む。花京院は驚いた顔をして俺を見つめ返した。予鈴が鳴ったのが聞こえたがそんなのはどうでもいい。腕を更に引っ張り反対の手で腰を引き寄せて口付ける。突然の事にびっくりしたのか花京院は必死で俺の体を押し返すが、力でもってそれを押さえ付けて動けぬようにした。やがて抵抗する事を諦めたのか、強引に押し込んだ舌先に絡みつき答えるように花京院の舌がねっとりとした動きをした。唾液が互いの唇の端から零れ落ち、やがて花京院が目を瞑りながら呼吸を乱して深く息を吐き出し涙ぐんだような瞳をして俺を見上げた。

「…急にッ、」

相手が抗議しかけたのを無視して耳元でさせてくれと囁くと否定も肯定もせずに花京院は呆れて微笑んだ。もう一度目を開けたままキスをするとうっとりとした瞳と目が合う。合意とみなして学ランの金ボタンに手を掛け早急に外しにかかる。花京院の腕が背後に回り背中を掴んだ。カッターシャツを肩迄ずらして首に鎖骨に口付け、胸の突起にはしつこく舌を這わして相手の反応を見た。乳首を舐められるのが気持ち良かったのか、普段と違う泣くような切ない声が漏れたのが聞こえた。同時に嫌だ、と首を振った。縋り付くように両頬に触れた花京院の手が愛しい。構わずに愛撫を続けて下半身まで服をずらして花京院の陰茎を掴む。既に熱を持って主張しているそれを扱くと花京院は恥ずかしそうに眉を寄せて声を我慢していた。

「声出しな」

「……ん、っ、……」

「何我慢してんだ、誰も聞いちゃいねえ」

「…じょぉ、たろうが聞いてる」

「当たり前じゃあねぇか。…前だけじゃ足りねえのか?」

虐めてやるつもりで後ろの孔へと指を突っ込むとビクッと体が動いて震える。指を抜き差しすると水音が繰り返し響きその度に花京院は呼吸を乱し、ある一定の場所を擦ったところで我慢の糸が切れたかのように嬌声を零した。

「……ひ、ぁ、…っあっ、承太郎っ?…やっ」

「……可愛い声だな」

「ん、やっ、承太郎、承太郎…っ」

名前呼ぶの好きなのか。俺自身の熱もキツくなってきてズボンの前を下ろして取り出すと、花京院が迷うようにそれを見つめていた。

「……咥えんの嫌か」

「…嫌じゃないけどさ」

「なんだ」

「上手く出来ない」

そんな事気にしてたのか。愛くるしく思えて花京院の頭を撫で回した。

「……でも承太郎がして欲しいなら頑張って上手くやる」

そう言ってから花京院は不慣れな感じで股間に顔を埋めてソレに柔く食いついた。遠慮がちに舐めてくる舌、吸い付く唇は全てがそこにあるだけで興奮材料になる。上手い下手は関係ない。心配そうに舐めながら俺の顔を見上げてくる視線はいやらしく卑猥にさえ見え煽られる。少ししてから花京院の頭を引き剥がして膝の上に向かい合うように座らせ、肩に捕まるように促し腰を降ろすように誘導する。歯を噛み締める音が耳元で聞こえた。

「力を入れるな」

「…っ、っ…あっ」

中を傷付けない為に溢れ出る粘液はぽたぽたと俺の膝に落ちてくる。目元からも滴がこぼれ落ち汗なのか涙なのか判別が出来ない。乱れる表情や遠慮がちな動きが可愛らしくて唯ひたすら突き上げて愛せるだけ愛そうとした。背中を必死に掴んで欲が弾ける終わりまでを可愛い仕草で喘ぐ花京院の姿が視覚を刺激した。時折痛そうに顔を歪めるのは可哀想で愛くるしくて胸が痛む。相手の涙を手で拭ってやると幸せそうにだけど壊れそうな笑みを見せて笑った。









「……こんな処でなんて信じられない」

花京院はそう呟いて睨むように俺を見た。そんな威嚇するような目をしたところで怖くもなんともない。気分的にも身体的にもこっちはスッキリしていたからいい気分で煙草を吹かしていた。

「よがってたじゃあねぇか」

「…っ、っ、ッ!!きみ、君はなにを、いっ…」

バシバシと俺の胸を叩いてそこに顔をうずめて、耳まで真っ赤にして花京院は黙り込んでしまった。否定仕切れなくて自己嫌悪で死にそうになっているんだろう。羞恥心を捨てろとは言わないがそんなに恥ずかしがる事もねぇだろう。初めての事じゃあるまいし。項垂れる可愛い花京院の髪を撫でると柔らかい石鹸と汗の混じったいい匂いが鼻腔を掠めていった。
















2015.6/11









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