ちいさい土方さんとあそぼう!!
てこてこ、と歩く足音が聞こえる。大の大人にしては軽く、少女である千鶴にしてはやけに小さな足音だ。
「あ、ま、待ってください」
ぱたぱた、ああ、これは千鶴だ。
微睡むように縁側で茶を啜っていた一がぼんやりと横を向く。
案の定、新選組には似合わない存在が存在している。大きな紫色の瞳は誰かを彷彿とさせ、長い髪は今は千鶴によって綺麗に結い上げられている。
一見して、可愛らしい少女風味の子供は「はじめ!!」と舌足らずによんだ。
「今日はなにする? 俺、あれがしたい! あの、あれー」
「ど、どれですか」
「あれ!」
「は、はあ……」
的を得ない回答を行う子供だった。
その子供を千鶴は「土方さんったら」と小さく笑う。
勿論、鬼の副長と恐れられた彼が子供であるわけが――ないのだが、
「とし」
「はい、トシさんです」
……いいや、どうやら、あるようだ。
ぷぅ、と頬を膨らませた小さな子供に、ああ、暇なんだな、よしよしと頭を撫でれば「あれをしよう」と一生懸命に跳ねている。
眠たげに瞼をこする『小さな土方さん』に一はどうしたものかと千鶴を見れば、微妙におかしそうに「あれです」と囁いた。
「多分、日向ぼっこしたいんです」
「ひなたこっぼ!」
「ひなたぼっこです」
「こぼ?」
「ぼっこ」
……何とも言えない。
実に何とも言えない状況だ。
困り果ててじっと見れば、小さな土方は大きな目で「寝るぞ」と正座した。
「は?」
「ひざまくらするんですか?」
「いえ、それでは副長の膝が俺の頭でつぶれます」
「だって、こうするって……ちづるが……」
「う……」
教えて、実践しましたと項垂れる千鶴に一は困り果ててきょろきょろ。
誰もいない。誰も――
きっとこうなることが分かって居たのだろう。総司は遊びに行ったしあの、三バカは買い物にいったそうだ。
どうしたものか、と見ていれば、はやくはやく、とせかす声。
ゆっくりと寝転がって目を閉じて――
>>ひじかたさんとあそぼう!
おまけ
「うー」
「重いならいいんですよ?」
「うーー」
「いいんですよってば」
「はじめがおちるーー」
「は、はい!ささえます!!」
<作 : やか様>
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