短編 | ナノ






バス停

今、私があいつと付き合えているのは、同じ学年で同じクラスで、
そんな近い位置にいられるからだ。
もちろん気が合うとか一緒にいて楽だとか他にも理由は多少あるだろうけど。


これも運命と言うのだろうか。
赤い糸的な意味ではなくて。










たぶん、御幸一也にとって私はただのちっぽけなバス停に過ぎない。
いくつもの停留所を経由して、最終的には大きなバス停にたどり着くんだ。


プロ野球選手でイケメンで、きっと御幸ならプロでも活躍して、なんならメジャーとか行っちゃうかも。

それでスポーツ番組とかのインタビューにくるアナウンサーと付き合って、結婚、そんな人生をおくれるような男だ、御幸一也ってやつは。




昼休みの教室。

御幸は早々に昼ご飯を平らげて、スコアブックを見つめている。
前の席を借りて後ろ向きに座った私は御幸に作ったものと同じ中身のお弁当をゆっくり食べる。
真剣な御幸にかける言葉はなくて、黙って食べるお弁当は少し味気なくて、頭の中で色んなことを考えてしまう。


御幸の人生の中では私との時間なんてただの通過点でしかないだろう。
きっと私はそれを生涯輝かしい記憶として持ち続け、時折懐かしむんだ。
あの頃は良かったって。
あの御幸一也の彼女だったこともあるんだなんて、声には出さないけれども、他人の評価で自分の自尊心をみたすそんなちっぽけな人生を過ごすんだろう。



「御幸はアナウンサーとかと結婚しそうだよね。」


華やかで美人でそんな人。
誰もが羨むような美男美女。











「はぁ?お前アナウンサーになるの?」



人の話なんて聞いてなさそうな顔してスコアブックを眺めていたくせに、ボソッと呟いた私の顔を見て、馬鹿にしたように笑う御幸。

いやーありえないだろーなんて呑気に笑いやがって。

「バカっ!むかつく」
「えっ、本気だったのかよ」

なんて見当違いなことを言う御幸には私の顔が真っ赤な理由なんてわからないんだろうな。

「天然タラシ。変態。」

「なんなんだよ。そこまで言うほどか?」




私は終点になれたりするんだろうか…なんて無駄な期待させないで欲しい。

「ならないよっ!」
「なんだよそれ」

笑う御幸が憎らしくて、だけど嬉しいなんて、ばかは私の方だ。



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