今日も彼は帰りが遅い。最近は仕事詰めで忙しいらしくなかなか帰ってこれないみたいで、遠いとホテルに泊まったりするので帰ってこない日も度々あった。ボディーガードという職業上、あまり馬乃介との時間がとれないのは仕方のないことだけど、あまり会えていないのでさすがに寂しい。恋人同士という関係になり、馬乃介と一緒に暮らせるようになったのに。私としてはもっとイチャイチャしたいとこだ。けど馬乃介は忙しいんだし、こんなのは私のただの我が儘だ。我慢しないと。
気を紛らすためにゲームをしていたら、私はゲーム機を持ったままいつのまにか眠ってしまっていた。


「ん…、あれ……?」

目を覚ますと、ゲームをしながら寝そべっていたはずのソファの感触は無く、何故かベッドに移動していた。それに、誰かに抱きしめられている状態だった。もちろん振り向けばそこにいたのは馬乃介で、馬乃介は仕事着のスーツのまま眠ってしまっていた。きっと仕事で疲れていたんだろうな…馬乃介の大好きなチェスを思い出す柄のネクタイすらも外していなかった。そんなに疲れてたのか…ネクタイしたままって、苦しそうだな。そう思った私は馬乃介のネクタイに手を掛け、外そうとするが、横の体勢のままでは腕を動かしづらい。ネクタイを外すのに苦戦していると、寝ているはずの馬乃介の手が、私の腕を掴んでいた。起きてたのかと気づいた時には、私の視界いっぱいに馬乃介の顔があって、私の口は声を出すのも許されず馬乃介の唇に塞がれた。そして視界は反転し、馬乃介が私を跨がり、顔を寄せて見つめてくる。

「チェックメイトだ、名前」

余裕そうに言う馬乃介と反対に、私は顔がりんごのように真っ赤になってしまった。



2012 03 17