「名前…」
「ん?一柳さん、どうしたんですか?」
「あのだな…その……うわああああああああああああ何でもない!!!!」
「あっ…ちょっと……!もう…」

や、やっぱりダメだ!本人を前にしてしまうと言えない…!くそ…


…俺は、名前が好きだ。結構前に、水鏡に言われて、そこからかなり意識し始めて…それ以来、毎回こんな感じだ。
「俺はイチリュウ検事だから、告白なんて簡単だ!名前は俺のお、女になるんだ!はっはっは…」なんて、水鏡に断言してしまったけど、こうして毎回言えず、水鏡に電話していた。

「もしもし…ダメだ!言えない!」
「はあ…どんだけ貴方はヘタレなんですか。いい加減告白してください」
「む、むりだ…おれにはできないよ…みかがみい…う、」
「はいストップ!泣くのは今回までにしましょうね。今日で貴方は名前さんと距離が近づくはずですから。まずはじっくりいきましょう」
「え…ま、マジ!?わかった俺泣かない!」
「…いいですか。必ず私の言うとおりにしてくださいね」
「わかった!」
「…………まず名前さんに、こう言って下さい。“水鏡と電話してたんだ!”と、必ず笑顔で言ってください。いいですか、笑顔ですよ」
「…………?」
「そして、名前さんにこう言って下さい。“なあ、名前。俺のこと、弓彦って呼んでくれないか。名前だけに呼んでほしい”と。最後が重要ですからね」
「え……」
「あとは任せます」
ブチッ
「ちょ、み、水鏡…」

電話が切れてしまった。ど、どどどうしよう……!?益々部屋に戻れねえ!

そう思っていたら、名前が部屋から出てきてしまった。

「一柳さん?」
「あ、ああ、名前!その…み、水鏡と電話してたんだ!」

一生懸命口を歪ませて、名前にどう見えてるかわからないけど笑顔になるように頑張って笑った。
そしたら名前は、何故か悲しそうな表情に………ってなんでだ!?

「………そう、ですか…水鏡さんと…」
「あ、あの、名前…」
「………なんでしょうか」

本当にこれでいいのか!?水鏡!俺不安しかない!だって名前悲しそうな顔で……本当にこれで距離が…
いや、水鏡を、信じよう…いつも、水鏡の言うとおりにすればなんとかなったし…

「おおお俺のこと!ゆ、弓彦って呼んでくれないか……?名前だけに、よ、呼んでほしいんだ…!」
「!」

ど、どうなるんだ?名前は何て…

「ずるい、ですよ…」
「え?」
「ずるいです、弓彦、さん」
「!!」

ききききき急に名前がっ………だだだ抱きついて……………!?一体何が起きてるのかわからな「好きです」

「………え、」
「…私、二回も同じことは言いませんので」
そう言って、名前は顔を真っ赤にしながら鞄を手に走って部屋を出て行ってしまった。


…って、え?


(あの鈍感検事が…どこで覚えたのよ)
(………何が……起きて…………)



2012 08 26