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夢のまた夢


私はね、ナナシ子。兄様のような男性が理想ですわ。兄様は寡黙で冷静沈着、容姿端麗で鴉としてもトップクラスの実力を誇っていますのよ!あんな兄様のような男性が他にいると思います?私には到底思いつきませんわ!きゃあああどうしましょうナナシ子!今から兄様のファンクラブでも作りますか!?ついでに兄様を隠し撮りして…えっ?それはやめた方がいいですって?何を言っておりますのナナシ子!兄様と離れていても兄様のお顔が拝めることができますのよ?これこそ至高ではありませんか!


「キャー!!兄様かっこいいですわ!!」
「………。」


とうとうテワクが行くとこまで行ってしまったようだ。今私の目の前で見事なまでのブラコンぶりを披露している彼女にはただただ感服するばかりである。しかし困ったなぁ。こんな風に彼を慕っている妹、かぁ。テワクとも長い付き合いになるけど、こればかりは言うことを憚られる。ていうか、よりによって今日!今日こそはテワクに真実を伝えようと腹を括ってきたのに、この有様!彼女は私の心を読み透かしているの?


「テワク、実は…」
「私、もし兄様に彼女ができたらその女狐を兄様から追っ払ってやりますわ!兄様に相応しい女性は…ゲフンゲフン」
「……ワオ」


ごめんねテワク。その女狐が今あなたの目の前にいましてよ。殺されちゃうわコレ。言ったら私間違いなくこの子に後付け回されて私が眠りに就いた瞬間首を獲りにくるに違いない。うわぁ死亡フラグだぁ。やだなぁ。なのにどうして私ってばあんな事言っちゃったの!ふとマダラオと付き合い始めた頃に彼に言った言葉を思い出す。


"テワクには私から言っておく"
"いいえ、マダラオ。これは私が言うわ。ちゃんとテワクに認めてもらいたいし"


あの時の私って、甘ちゃんだったんだわ。きっとマダラオはこうなるって知ってたのよ!うわああん彼の好意をありがたーくもらっておけばこんな事には…!


「ところでナナシ子」
「あ、ハイ」
「あなたの好みの男性は?」
「……ワオ」


追い込まれた、私!追い込まれたよ!!あっ、ここでマダラオの名前出しとけばいんじゃない!?ああああでもそんな事したら目の前の天使が悪魔に豹変するのなんて目に見えてるよ!!あっ、分かった!マダラオの特徴を上げていけばいいのよ!ナイス私!


「そ、そうだね…ち、知的でクールで…身長は私より高い方がいいかなっ。あと、強い人がいい!それで、それで…えーっと…あっ、時々甘えられるとキュンてくるかな…なーんて、アハハ…」
「……ナナシ子、それって…」
「私のことだ」
「兄様!!」
「マダラオッ!?」


私が言い終わったあと、テワクに訝しげに見られたから終わった…と肩を落としていると、ふとその肩に重みを感じた。そして同時に聞こえた彼の声。慌てて横を見ればそこにはマダラオが立っていて。この展開はなんだ。泥沼か!?


「それはつまり、どういう事ですの…?」
「あ、あのねテワク、こ、これは…!」
「分からなくはないだろう。私はナナシ子と付き合っているんだ」
「実直!」


彼に対するイメージがまたひとつ増えた。うんうん、こいつはいつでも素直すぎるよな。


「そんな…ナナシ子っ、どうして…!」
「あの、ご、ごめんね!前々から言おうと思ってたんだけどその…」


テワクがわなわなと震えながら私を見ている。もうホント申し訳ございません!でもあなたの兄を好きなんです!あなたに嫌われてもこの気持ちを曲げるつもりは毛頭にな…―


「どうしてそんな美味しい話をっ!今まで黙っておりましたのっ!?」


―い、って。え?


「…美味しい?」


聞き間違いかしら。うふふっ、そうよね。ちょっと色々ありすぎて気が滅入っちゃってるんだわ。そうよナナシ子。今のは聞き間違い…


「そうでしてよ!もし兄様に彼女ができても、ナナシ子じゃなかったらどんな手を使ってでも別れさせてやろうって目論んでいましたのに!ナナシ子ならむしろ大歓迎ですわ!ていうか今までずっと、さっきだってあなたに兄様をすごく推していたんですのよ!?うふふっ、これでナナシ子が私の姉様になるんですのね!なんて素敵なの!キャー!!」
「…だから言っただろう、ナナシ子。私が言うって」
「…マダラオ、こうなるって分かってたならそう教えてくれたら良かったのに。私てっきり別れさせられるかと…」
「そんな事しませんわ!」
「もし別れさせようとあいつが動いても、私はお前と別れるつもりは毛頭ない」
「っ!マ、マダラオ…」
「キャー!!兄様かっこいい!!」
「ペケポン」
「えっ!?マダラオ!?」


どこのお笑い芸人だお前らァ!!マダラオってそんなキャラだったの!?いや別に構わないんだけど!!ていうかもうさっきまでの甘い空気ないし…。ホント、一瞬だったよ…。



ロマンスなんてのまた



「ところでふたりはいつから付き合ってらして?」
「うーん、大体5ヶ月くらい前からかなぁ」
「そうだな。大体それぐらいだ」
「ナナシ子っ!籍はいつ入れるんですの!?」
「気が早いよテワク!」
「私はいつでも良いんだがな」
「電撃結婚か!!」


-end-


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