「……楓……? 三葉……?」
音を立てて燃え盛る炎の中で、幼い少年は立ち尽くしていた。
崩れ落ちた小屋。倒された木々。
――――何が起きた? そう自らに訪ねても、答えは浮かばない。
「どこに、いるの……?」
――――何故だろう、首が千切れるように、焼けるように痛む。
怪我なんてしてないはずなのに、どうして……。
ふらつく足で、少年は1歩1歩と前へ向かって足を進める。
名前を呼んでも返事がない――――それがどういう意味を表すのか、混乱した頭ではそれすらも分からない。
『……まだ、生き残っていたか』
突如、そんな声が脳内に響いた。
恐怖が少年を振り向かせまいとするが、それに逆らうように少年は振り向く。
そこに立っていたのは――――見慣れない白い服を着て、まるで羽のように長い白銀の髪をもった、人間。
長い角がついた金の仮面を被っているせいで、素顔を見ることはできない。が、その異常性を感じることは少年にも出来た。
(逃げなきゃ……!)
そう思い、少年は急いで踵を返し逃げようとした。
その瞬間、少年の視界は宙に浮いた。
(…………え?)
そして直ぐに、重力に従い地面に落ちた。
目線しか動かすことの出来ない状況で、少年が最後に捉えたのは、血を吹き出しながら崩れ落ちる自身の身体。
自分に何が起きたか、理解してももう手遅れだった。
『火流の血を残すことは許されていない。許せ、少年よ』
そんな声が、意識を失う前に聞こえた気がした。
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bkm