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NOVEL
▼気になってしょうがない

撮影が始まると遊馬は心の昂りを抑えきれずにいた。邪魔にならないようにと凌牙が用意してくれたパイプ椅子に座りながら撮影を見る。凌牙は小物の黒縁の伊達眼鏡をくいっと上げてみたり、脚を長く見えるように立ったり、衣装を替えたりと忙しそうだ。そんななか汗一つかかずにこなす凌牙がすごいと思った。一方カイトは遊馬の隣に立って凌牙の様子をただ見ているだけだ。時々ギリッと下唇を噛んだりして「やるな…」などとぼやいている。ライバル、なのだろうかと遊馬は思う。まだ会ったばかりの人にいきなりの呼び捨ては失礼だよなと思い、さん付けでぎこちなく呼んでみる。

「カイト…さんってさ、」
「カイトでいい」
「あ、えーっと…カ、イトって凌牙と仲良いの、ですか?」

その問いかけに少し驚いたようだ。それと使い慣れてない敬語に吹き出している。ククッと笑われると、少し咳払いをして仲が良いように見えるのかと逆に聞かれてしまった。質問を質問で返すとは…と遊馬にしか見えないアストラルが隣でボソッと呟いた。遊馬はカイトの質問に対して素直にこくりと頷く。

「考えたこともないな。」
「そう、なんですか…」

少なくとも自分よりは長い時間を共にしてるんだろうなと思った。先ほどの会話のやりとりを見ていれば分かる。もう少し、凌牙とも打ち解け合えたらなぁと考えているとカイトも気になったことを話始める。学校の事や、カイトが18歳だということ、それ以外にもたくさんの話をした。学校の事、というと彼は学校に一応通っているが、仕事の多忙でほとんど行っていないらしい。正直カイトが18歳だということに関してはすごく驚いた。本人には失礼だが18歳にしては少し幼く見えたからである。いつの間にかカイトとの会話に夢中になってしまってつい笑ってしまう。

「敬語じゃなくていい、慣れてないんだろう」
「え、でも…」

そう言うとはにかんでくる。そしてカイトの出番になったのか「俺の撮影も見てるといい」と言うとセットの方に向かっていった。先ほどの静かな表情とは別でしたり顔や微笑みをカメラに向けている。きっとあの笑顔に世の人間は虜になるんだろうなと思った。ちょっとだけかっこいい。一番は凌牙だから、ちょっとだけ。

「…?」
『遊馬、何故シャークとカイトは一緒にいるんだ?』

そんなの俺が知るか!そう顔で訴えるとアストラルは恋人同士なのかと言いだし、二人の方をよく見ると仲良くてなんか繋いでいる。こ、これは撮影だしそういう雰囲気してるだけだ…!と自分に言い聞かせる。なんだか凌牙が自分以外の人と隣にいるのを見ていると無性にイラッとなる。これってなんていうんだっけ。そう嫉妬。きっと今の自分の顔は不細工なんだろうなと思う。何もできないしこんなことでヤキモチをやく自分をどうかと思う。少し外の空気を吸って落ちつこうと立ち上がる。

『遊馬、どこに行くのだ?』
「ちょっとトイレ」

そう言ってパイプ椅子から立ち上がって外へ行く。太陽はオレンジ色で西に傾いていた。


[2012.5.20]
遊馬だって嫉妬するんです


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