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NOVEL ▼あなたの声が私をほっと解す 「遊馬、」 「ん?」 この声は凌牙だな、と分かると彼に微笑んでみせる。遊馬は誰もいない教室で凌牙を待っていた。凌牙は遊馬の隣に座ると西に傾いた橙色の太陽の光に目を眩ませる。遊馬はなに?という顔をしながら凌牙を見つめる。 「遊馬、」 「だからなんだよー?」 「…帰るぞ」 遊馬の頭をそっと撫でながら、優しい口調でそう告げた。凌牙は遊馬が自分と一緒に帰るために待っていてくれたのを知っている。そのために鉄男や小鳥達に補習があると嘘をついていて残っていてくれたことも知っている。今日に限って帰りが遅くなってしまうなんて。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 「…あのさ、一つお願い!」 「なんだよ?」 遊馬がふふっと笑いながら言う。待たせてしまったことに罪悪感をいつまでも引きずっている自分が惨めに見える。・・・らしくない、そう思って頭を切り替える。きっと遊馬もそう思ってるに違いない。 凌牙は勿体振るなと遊馬の頬を引っ張ると、柔らかくてそのまま思うがままに遊んでみせる。やめてやると、いたた…と赤く腫れた頬を抑えた。 「お泊りさせて!」 「…週末にな」 遊馬の赤く腫れた頬にキスをする。凌牙は遊馬の鞄を取り、自分の鞄も持つと教室を出る。ポカンとしている遊馬に置いて行くぞと言うとぱたぱたと小走りでやってくる。 凌牙の隣に並ぶように歩いて行くと夕日が待ちかまえていたかのように真正面にあった。 [2012.4.17] お借りしました。 affirmation | |||||