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NOVEL
▼初めて見る世界

カイ→遊←凌。ちょっとカイ凌に見えてしまうかも…。


「カイト様、オ疲レ様デス」
「…あぁ、そういえば凌牙が見えないが。どうしたんだ?」

カイトにお茶を出すオービタル7はだんまりだった。カイトはまぁいいかなんて思いながら茶を啜った。熱めの渋いお茶で少し顔を顰める。お茶が嫌いなわけではないし、渋いのが嫌いなわけでもないがなんとかして飲み干した。オービタル7はカイトが罰の悪そうな顔をするので申し訳ありませんと謝罪をした。そんなことはカイトにはどうでもよく、とにかく凌牙が気になって仕方なかった。そわそわする気持ちを抑え込み、控室でゆっくりとしているとドアをノックされる。どうぞと返事をすればガチャッとドアがゆっくり開いて失礼します、という声と同時に凌牙が入ってきた。

「来たか」

ドアを閉めればカイトのところに歩み寄る。そう言えば頷く様子もなくその場に立ち尽くすと静かに口を開いた。ただカイトを見つめていつもの口調で。

「奴が来る」
「…それだけか?」

忠告しに来ただけだと彼女は言うとふっと顔を背けた。ぽふんと凌牙の頭を撫でてやる。カイトの行動に驚いたのか凌牙はハッと顔をあげてしまった。カイトはじっと見つめてくる。オービタル7が気まずそうにカイトに声をかけた。

「カイト様、ソロソロ時間デスガ…」
「…邪魔したな、それだけだ」

カイトは凌牙の頭から手を放す。凌牙は用件を伝えると踵を返しそのまま控室から出ていった。オービタル7は何の事だかさっぱり分からずカイトに問いただすが返答は無かった。

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「うわー、すっげー!」
『うむ、君の部屋よりかなり広いな』

遊馬は凌牙の案内についてくると、広いスタジオをキョロキョロと見回す。アストラルは照明機具に興味があるようだ。照明やカメラがたくさん有り、遊馬は先程からすごいしか言ってない。凌牙ははぁと溜め息を吐く。本当はこんなところに連れてくるべきじゃなかったんだけどなと思いながらもそのまま歩いていく。ことの始まりは遊馬にモデルをやってることがばれたからだ。先日遊馬を凌牙の家に招いた(というよりは連れて帰った)時に女であることがばれたことが原因である。もっと用心するべきだったなと凌牙は自分の軽率な行動に悔いた。

「おい、凌牙」

遊馬を連れて歩いているとカイトが現れ、もうすぐ撮影だと言われる。あぁ、もうそんな時間なのかと時計を見る。その際、遊馬は誰なんだろうこの人という顔でカイトを見るが彼も彼女と同じくなんだこいつはと思っていたのは言うまでもない。
凌牙に手を引かれすたすたと歩いて行く。座ってろとパイプ椅子を差し出されると遊馬は素直に座った。凌牙は控室に行くからちゃんとここにいろよと告げるとその場を立ち去った。ぽつんと一人取り残されてしまった遊馬はぷらぷらと脚を伸ばす。

「お前は誰だ?」
「俺?九十九遊馬、シャークの後輩」

カイトが問いかけると遊馬はにこりと微笑みながら自己紹介してきた。凌牙の後輩だと知るとなるほどなと呟いた。何が?という顔で遊馬はカイトを見上げる。カイトは自分の名を告げると薄く笑みを零した。「天城カイトだ」と。そして遊馬の傍にしゃがみこむと手を取る。手の甲にちゅうっと口づけを落とすとやはり想像通りに遊馬は顔を真っ赤にしてわぁっとカイトを振り払う。

「狩らせてもらおうか、貴様の心(ハート)ごと!」
「おい」

決め台詞らしきものを言ったところでカイトの後ろにはメイクや衣装に着替えた凌牙が立っていた。その凌牙の眉間には皺がよっていた。遊馬はシャーク可愛い!などと言っている中、カイトはにんまりと口角をあげた。凌牙は無言で遊馬の手を取るとカイトが口づけを施したところにちゅっと口づけた。遊馬は耳まで赤くしてしまう。

「しゃ、シャーク…!」
「後でちゃんと手洗ってアルコールで消毒するんだぞ」

遊馬は口をぱくぱくさせていてまるで金魚のようだ。遊馬から視線を外すとカイトを見る。カイトと凌牙の間にはバチバチと見えない火花が散っていた。タイミング悪く撮影の時間になり、凌牙とカイトはチッと大きな舌打ちする。遊馬とアストラルの頭には?がたくさん浮かんでいるがそのまま流されてしまう。

「遊馬、そこで見てろ」
「う、うん」

凌牙は少し微笑みながら遊馬に告げた。その表情は凛として見えた。きっとこれから撮影が始まるだろうか。照明に灯りがついて少し眩しく感じたが悪くは無かった。


[2012.05.16]


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