HOMEINFOMAINLINKCLAP

NOVEL
▼とても素敵だなって

朝の通勤ラッシュ。今日はショッピングの日。学校も休みで、先日の雑誌の影響もあり一人で行くことにした。小鳥を誘ったりしたが生憎家族で旅行なんだとか。自分は家族と旅行なんてこれから先できるんだろうか。なんて思ったりもしたが今が楽しければいいやと思うとどうでもよく思えた。定期を改札に通して抜けていくとホームへの下りの階段を降りていると見覚えのある髪形を目にする。あれは学校の札付き…。神代凌牙だった。クールな印象で遊馬とは全く違う才能を持っているだろう。どうしても雑誌の表紙を思い出してしまう。あの優しい表情の彼女と一緒にしてしまうなんて。

『…ま……遊馬!』
「ぅわ!?何だよ、アストラル」
『あれを見ろ』

アストラルが指差す方向には電光掲示板。9:23発のハートランド行きは人身事故のため運転を見合わせております…とテロップが流れていった。復旧の目途は経っていない。このままでは何時に到着するかわからない。折角の休日が台無しになってしまう前に諦めて帰るべきかと考えた。だがそれでは充実した一日にはならない。遊馬は電光掲示板の前で騒いでいると後ろから神代凌牙が声をかけてきた。仏頂面で背の低い遊馬をじっと見つめる。なんて冷たい目なんだろう。

「しゃ、シャーク…!?」
「…声がでけぇよ、お前が邪魔で見えねぇ。」

凌牙の言う通り、電光掲示板の前で立ち往生していては他の人に迷惑だ。ごめんと謝りつつその場から離れ、待合室に入ることにした。凌牙も遊馬に続いて入ってきた。自販機にある缶コーヒーを購入し、遊馬の向かい側に何故か座った。生憎、待合室には遊馬と凌牙しかいない。気まずいったらありゃしない。遊馬が凌牙に視線を向けると睨みつけられる。そんなにガン飛ばさなくてもいいのになと思いつつ話をしてみることにした。アストラルはいつの間にか鍵の中に戻ってしまっていてさっきまで2人+1だったのに完全に二人きりだ。

「シャークもハートランドに行く予定だったのか?」
「…まぁな」

生返事をされたがシャークとこうやって話ができるのは嬉しい。札付きという肩書きで話しかけられない雰囲気を作っていた彼だがちょっと打ち解けられたかな、と思うとすごく嬉しかった。

「お前は何のためにハートランドに」
「え、俺は…ショッピングしに…」
「どこで」
「うーん、特に決めてないから向こうに着いたら決めるつもりだったんだけどさ…」

へへっと笑ってごます遊馬にふーんとだけ言うと彼女の格好をじっと見つめる。すると凌牙はすくっと立ち上がると飲み終えたコーヒーの缶をゴミ箱に入れ、遊馬の隣に座った。隣に座る凌牙を近くで見るときりっとした顔立ちで、肌も白くて睫毛もよく見ると長い。つけ睫毛と同じくらいあるんじゃないだろうか。

「シャークってかっこいいよな」
「…は?」
「こんな近くで見るの初めてだけど肌とか綺麗なんだな!」

遊馬はにっこりと微笑みながら告げた。まるで告白のようだ。褒め言葉を真に受けてしまった凌牙はみるみるうちに顔を赤くした。そして顔を俯かせてしまった。

「遊馬って言ったな…お前変わってるな」
「変わってるのはどっちだよぉ!」


モノレールに結局乗れたのは2時間30分後のこと。待ち時間は退屈しなかった。

[2012.02.09]


- template kmsgr -






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -