夢小説・長編 | ナノ
14:見てられない(1/2)
心配だ。
その一言に尽きる。

誰がかと言えば…まぁ、ガーネットもそうなんだけど・・・。
どっちかというと今の心配は目の前をふらふらと歩くユイのほうだ。

オレは置いていくつもりだったけど、絶対に行くというユイの強い意志に負けて連れてきちまった。
自分で連れてくって、オレが守るって決めたくせに早くも後悔してる。

「おい…大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!へっちゃらですよ!」
「お、お姉ちゃん…」

ビビもユイの異常を感じ取っているのか、心配そうな顔をして見上げている。
スタイナーのおっさんは無頓着なのか、はたまたガーネットの心配で頭がいっぱいなのか。
明らかにどんどんと顔色が悪くなっていくユイに気づいてない。

「……こっち…の方向…です」
「うむ!こちら側ですな!姫さまー待ってくだされー!」

どうやってんのか相変わらず分からないけど、ユイはガーネットがいるっていう方へオレたちを案内している。
それに、魔物がどこにいるかもわかるらしく戦闘をする機会はユイのおかげであまりない。
時間も体力も無駄にしたくないオレたちとしては嬉しいけど…。

「ユイ!やっぱり休もう!倒れるぞ!」
「む!姫さまが助けを待っているというのにそんな時間は…!」
「おっさんはユイの顔色の悪さに気がつかねーのかよ!このままじゃ倒れるぞ!」

ユイは浅く呼吸を繰り返して、じっと木に手をついて目を瞑っている。
…気がついたけど、たぶん…なんらかの方法でユイはあたりのことを調べてるんだ。

それが魔法なのか何なのかはオレには分からない。
けど、それが原因でユイの体力が減っていってるんじゃないかってことは予想がつく。

「しかし…」

まだ言い募るおっさんをオレは睨む。
確かにガーネット姫も心配だが…ここでユイが倒れたら倒れたで困る。

「よく考えろおっさん!ユイが倒れたらオレたちはガーネット姫がどこにいるかわからなくなるんだぞ!?
ユイをちょっと休ませて、少しでも体力を回復させたほうがガーネット姫に早くたどり着くだろうが!」
「む…うう…」
「お姉ちゃん!」

うなるおっさんに溜息をついていたら、ビビの慌てた声がしてオレはユイを振り返った。
そこには、もう限界なのか…ユイは木にしなだれかかっていて、やっとのことで立っているという状態だった。

「お姉ちゃんしっかりして!」
「ユイ・・・!大丈夫か!?」
「ユイ殿!しっかりしてくだされ!」

もう駄目だ。手がふさがっちまうけど…どこか休めそうなとこまで抱き上げようと思って近づけば、
ユイはか細い声で『…大丈夫です。…歩けます』といった。
ああ、もう。
なんでそんなにぶっ倒れそうになるまで頑張るんだ。

「いいから。そんなに一人で頑張らなくていいから」

そう言ってユイの体を抱き上げた。
ユイの頭が、オレの首元あたりにおさまる。
その近さからか、すんと鼻をすする音が聞こえた。

「おっさん。ビビ。魔物がでたら頼むな」
「う、うん!」
「うむ。お主はユイ殿を危険にさらさぬように努めるのだ!」

はいはい。頼りにしてるぜー。

「ユイ。いまから休めそうなところを探すから、ちょっと我慢してろよ?」

そう言って、とりあえずユイが進もうといっていたほうへと足を向けたのだが…耳元でユイがぽそぽそと呟き、オレは溜息が漏れそうになる。

「ジタン?どうしたの?」
「んー?そこの倒木の斜め45度の方向へ30メートル。そしたら泉があるってさ」

こくりと腕の中のユイが頷く。
こいつ…本当に今の自分の体調わかってねーな。


そう思いながらも、ユイの言う通りに進めば、綺麗な泉に出た。
心なしかここは空気が澄んでいて…魔物も寄ってこなさそうだ。

「ここで休むぞ」
「うん」
「自分は少し先を見てこよう」

おっさんはそう言うと行ってしまった。
まぁ、あれでも剣はたつみたいだから大丈夫だろう。
ユイがいないとガーネット姫の居場所もわからないし、遠くに行こうとはしないはずだ。

とりあえずユイを木の根元に下ろしてやる。
さっきよりは…幾分かは顔色いいか?いや、どっちみち悪いには変わりない。


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