「ちょっ…やめて下さい!」

「月詠がわりーんだ。素直じゃねぇから」

「っ、さか…!

「坂田先生。そろそろ診察始まりますが、準備は宜しいですか?」

「はっ、はい!良いタイミングじゃ!!」

「…ちっ」



ちらりと横目で銀時を見ると、当の本人はくるくるとボールペンを回して欠伸をしている。


月詠は呆れてものも言えず、溜め息を吐く。


本気なのか、それとも冗談を言い自分をからかっているだけなのか。



「はー…」



月詠はカルテを握り締め、二度目の溜め息を吐いた。






















Special Thanks!
分からなくても良いじゃない、人間だもの



















坂田先生と同じ病院に配属が決まった時、月詠は本当に嬉しかった。


坂田銀時。


医学界でも彼の名を知らない者はいない。


多くの困難な手術を成功させ、その傍ら担当の小児科でのボランティア活動は積極的で。


月詠が尊敬し、目標にしている人物である。


数々の輝かしい功績にも関わらず、便所下駄にだらしなく着た白衣という風体。


質素で飾らない、そんな雰囲気も含めて憧れていたのかもしれない。


それは、一部過去にすぎないが。



「んだよ、腹いてーってか?アイスの食い過ぎじゃねぇの?」

「ぼくアイス食べてないもん!」

「じゃーあれだ。出るもん出てねぇんだろ。うん、決まりだ」

「坂田先生…ちゃんと診て下さい」



坂田先生の診察を言で言い表すなら、適当で子供っぽい。


診察室は売り言葉に買い言葉が飛び交う。



「せんせーだってとうにょうじゃん!」

「あー?ちげーよ。銀さんはだな、糖尿じゃない、糖尿病寸前なだけだ」

「………」



一向に進まない状況に聊か苛立ちを感じながらも、余計な事は口を挟むまいと横で見ていた。



「で、腹は。まだいてぇの?」

「…あ。ううん、いたくないよ」

「じゃ、これやっからとっととけーれ、けーれ」

「わ…坂田せんせーありがとう!」



ポケットから飴玉を取り出すと、小さな手のひらに乗せる。


男の子は満面の笑みを浮かべ、手を振りながら出て行った。



月詠は瞬きを数回する。



「坂田先生、どのようにして治したんですか?」



んー、と大きく伸びをして月詠を一瞥すると、にやりと悪戯に成功したような笑みで。



「銀さんにかかれば、こんなもんよ」



と。


非科学的なのに、何故だか納得してしまう。


「(本当に、良く分からない人…)」



月詠は内心呟いた。




























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