「月詠様。客人にありんす」



襖の外から女中が用件を告げる。


自室で化粧をしていた月詠はその手を止め、襖を開ける。



「まだ昼ではないか。店が開くのは夕方じゃ」



首を傾げながら怪訝な表情で見ると、女中はうっすらと笑みを浮かべた。



「桂殿でございんす。店先で待っておりんすよ」



意外な客人の来客に、月詠は目を丸くした。



















Special thanks!
彼の半分は優しさで出来ているらしい


















店先へ急ぐと、見馴れた黒で長髪の男の後ろ姿が見えた。



「桂殿!」

「月詠殿」



小太郎は客用の湯飲みを持ちながら振り向く。


月詠は隣に腰かけた。



「突然の訪問、許して頂きたい」

「わっちは平気じゃ。何故此処に?」

「これを月詠殿にと頼まれてな」



差し出されたのは大きな花束。


色とりどりの花が調和をなし、顔を埋めると甘い香りが漂った。



「綺麗じゃ…。これは誰からので?」

「幾松殿だ」

「幾松が?」

「“誕生日おめでとう”だそうだ」



小太郎に言われ、成程と頷く。


先週末に月詠は誕生日を迎えた。


当日は一年の中で一番忙しいと言っても過言でない程、ひのやは賑わう。


それを知っていた幾松は、おそらく落ち着いた今頃を見計らって花束を寄越したのだろう。



「ありがとうと伝えてもらえぬか?」

「あぁ。必ず伝えておこう」

「申し訳ありんせん、桂殿」



幾松からの花束だと思うと、嬉しさが込み上げ思わず笑みが溢れてしまう。


小太郎は茶を啜り、月詠の様子を見て満足気に微笑む。


視線が髪に移り、ふと簪が目に入った。



「それ…」

「え?」

「簪」

「あぁ…これは誕生日に銀時から貰いんした」

「フッ、やはり月詠殿に渡したのだな」



小太郎の発言に月詠は首を傾げる。



「やはり?」

「あれは月詠殿の誕生日の数日前だ」




















ガラリと音を立て、老麺屋・北斗心軒の引戸が開かれる。



「すみません、まだ店開いてな…

「よぉ」

「銀時」



昨夜に仕込みをしたスープを味見していた時、銀時はダルそうに軽く手を上げ挨拶すると中へ入る。



「暖簾はまだ上がっていない。何の用だ」

「テメェに用はねーよ」

「は?」

「あら、いらっしゃい銀さん。朝早いのね」



二階から下へ降り、銀時に気がつくと幾松は声を掛けた。



「なー、例えばだよ?例えばの話だけど」



小太郎を無視して銀時はカウンターの椅子に座る。



「幾松っちゃんが貰ったら嬉しーってなるモン、何?」

「物?」



厨房へ入り、手を洗いながら考える仕草をする。



「うーん…いきなり言われてもねえ」

「………」



難しい顔をして真剣に悩む銀時を見て、幾松は悪戯っぽく笑みを浮かた。

























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