「…は?」


陸奥は聞き間違えかと思ったが、そうではなかった。



「陸奥、おまんが好きなんじゃ」



いつもの帰り道に見馴れた風景。

景色が変わり始めたのは、その日からだった。

















Special Thanks!
まるごとスター・フルーツ














公立銀魂高校、剣道部。

以前はそれほど目立つ部活動ではなかったが、三年前を境に活気付いてきた。

個人戦で好成績を残している選手が二人。

彼等に触発されたのか、追い付け追い越せと部員にも気合いが入り始めた。



「ハァッ!!」


「ハィッ!!」



鬱陶しい夏の暑さにも負けず、汗だくになりながら。

道場には威勢の良い声が飛び交っていた。



「そこ!何ボサッとしゆう!相手に隙を与えるな!」


「はいっ!!」



竹刀同士がぶつかり合う音が犇めく中、声を張り上げているのは女部長、陸奥である。

動く度に、栗色の髪の毛から汗が垂れ落ちる。

彼女こそ、この部活動に活気を与えた一人だった。



「やめーっ!!集合!!」



打ち合う音は次第に消え、陸奥の前へ次々と部員が集まる。



「夏はこれからやき、部活中も水分ばしっかり摂るように。明日も同じ時間から始める。ご苦労様でした!」


「「ご苦労様でしたっ!!」」



挨拶の後一礼すると、部員は近くにいた友達と話をしながら道場を出る。

竹刀を担ぎ、タオルで汗を拭きながら陸奥もそれに続く。



「陸奥」



その声のせいで、特別心臓が一跳ねした。



「昨日の


「わし今日は塾があるき、道場の鍵当番頼む」



振り返ると、視線も合わせずに辰馬の掌に鍵を置く。



「お疲れ」


「陸奥!」



呼ばれても聞こえなかったふりをして、その場を去った。











「(…あんなこと急に言われても…どんな顔すればええちや)」



女子更衣室で袴を脱ぎながら、昨日のことを思い出していた。









「陸奥が好きじゃき」


「…冗談キツいぜよ」


「冗談じゃなか。わしは本気やき」



普段の辰馬からは想像し難い程、真剣な表情で陸奥を見つめる。



「そがなこと…言われても…」



雰囲気に堪えられず、地面に視線を落とす。



「…あ!」


「え?」



咄嗟の思い付き。

辰馬の後ろを指差し、よそ見をした隙に逃げるように駆け出した。



























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