「月詠ねーちゃん、僕のママになって!」
まぁ、この発言は子供の言うことだ、いちいち気にしていたら小児科医が勤まるか、と銀時は思う。
「そうなってくれたら私自身も嬉しいですよ、本当に」
「お父様まで。冗談は止めて下さい」
これだ。
息子の面倒を看ている優しい父親面して、密かに月詠を狙っているのが丸分かり。
月詠も月詠で、やはり患者の親族ともなると、適当な態度は出来ないのだろう。
しかしそれ以前に、月詠は気づいているのだろうか。
「坂田先生何してるんですか。午後の診察始まりますよ」
「……」
通り掛かった看護婦に呼ばれ、最後まで月詠に視線を送るが気づかず。
銀時は諦めて、渋々病室から離れた。
Special Thanks!
その婦、既に専属済み
「せんせーせんせー!」
床に着かない足をパタパタ揺らしながら、銀時を見上げる。
「んだよ?トイレか?」
午後の診察が始まり、聴診器で子供の心音を聴く。
銀時は両耳から外すと、首にかけた。
「月詠姉ちゃんってあの子のパパのことが好きなの?」
あの子というのはおそらく、先程まで自分がこっそり覗いていた部屋の子供。
「…何でそー思うんだ?」
一瞬大声で否定しようとした声を呑み込み、銀時は自分を落ち着かせるべくゆっくりと口を開いた。
「だって月詠ねーちゃん、あの子のパパといつも話してるもん」
「んー、それは
「いつもにこにこって笑ってるんだもん」
「あー、人の話は最後まで聞いてほしーなー。だからそれは
「あぁ!それからね
「っだー!!!もーいーから!いーか、良く聞け!!あいつは──」
次に言わんとした言葉が詰まる。
後ろで子供の診察を見ている母親と、隣に立っている看護婦の視線が突き刺さった故に。
気まずい空気を裂くために、一度咳払いをする。
「ほら、風邪薬出してやっから。お子ちゃまは家帰ってささっと寝ろ」
「月詠ねーちゃんが、なあに?」
「何でもねーよ、ほら、お母さん待たせんなって」
母親に手を引かれ、診察室のドアが閉まる。
「ふー…」
銀時は椅子に深く腰かける。
『良く聞け!!あいつは──』
勿論母親と看護婦の視線のせいもあるが、ある一つの疑問が自身で渦巻き、続きを言うことが出来なかった。
「……」
─月詠は俺の、何?
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