好きだから、触れたい。
好きだから、触れられない。
「頭…!」
「何じゃー陸奥」
「っ…その、お、おまんの手」
「手?」
「大きいと…思う」
「別に普通じゃなか?」
「わしと比べれば分かるちや」
辰馬の右手を掴むと、陸奥は自身の同じ手を重ねる。
「ほー、確かに。陸奥はちんまいのう」
「だから言っちゅうきに」
「もっと食わんと大きくなれんろー」
重ね合わせたのはほんの数秒間。
直ぐに離れた辰馬の手は、ぽんぽんと陸奥の頭を撫でる。
「………」
「な?」
「こんの…死ねェェ!!!!」
「え、陸奥、ギャアァ!!!」
Special Thanks!
それは宝物
「…何故じゃ」
陸奥は一人部屋に隠り、ファッション誌を開く。
「地球で買うたのに…わしがちごうてるんか?」
恋愛テクニックと大きく載っている箇所を開きながら、溜め息。
陸奥は雑誌を閉じると、机の奥へ押し込んだ。
最近付き合い始めた頭と部下。
だからと言って何か変わった訳ではなく、仕事の取引、交渉に追われ毎日が徒に過ぎて行く。
「はぁー…」
陸奥は焦っていた。
恋愛経験豊富の相手に比べ、恋愛初心者の自分。
何をしてあげれば喜ぶかなど分からない、しかし辰馬から求めることもしてこない。
「(…手)」
触れたいと思うのは自分だけなのだろうか。
手だけでなく、自分が許された辰馬の全てに触れたいのに。
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