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この話をイトーさまに捧げます



眠いなら横になったらいいのに。

って、確かに言いましたケド。

ほんとに寝ちまうかなァ…

ナルトは片手でくしゃくしゃと髪をかきむしりながら顔をしかめた。



久しぶりにお休みが合う今日は、ヒナタが手作りのお菓子を持ってきてくれて、ナルトがお茶を入れて、二人でお菓子を食べながらのんびり過ごそうね、って約束してた。
お菓子はなんとクッキーとゼリーと二種類も作ってきてくれて、すごく嬉しくてすぐにも食べたかったのだが、箱を開けたとたん、

「あ〜…やっぱり〜…」

ヒナタの顔が悲しげに曇る。
ゼリーがゆるんで少しこぼれていたのだ。

「途中で…サクラさんといのさんと…話が弾んじゃって…」

立ち話をしてしまっていたらしい。
まだまだ暖かな気候、ひんやり、ちゅるるん!と冷たいゼリーはさぞ美味しいだろうとこしらえたのに、さほど長くもなかった立ち話でも温まってゆるんでしまうなんて。

「ヘーキヘーキ♪冷蔵庫で、もいちど冷やせばいいんだってばよ♪」

それまでの間、何してよっか?

ナルトはニカッと笑ってソファのヒナタの隣に座ったが、ヒナタは小さな本を胸にそっと抱えて困ったように首をかしげている。

肩からかけていた鞄にも入れず、手作りお菓子を入れた箱と一緒にわざわざ手に持ってきたその本の存在に、ナルトも気づいていなかった訳ではないが、なんとなく無視したままニコニコとヒナタを見つめた。
ナルトが本のことにふれてくれないので、ヒナタは思いきって言ってみる。

「あ、あのね、ナルトくん、この本…あと少しだから読んでしまいたい…んだけど…」

だめかな?

眉をひそめてますます首をかしげて聞かれては。
逆らえるわけがない。

「…わぁった。んー、じゃあオレ、お茶いれてくるってばよ」

立ち上がるナルトを見上げて、ごめんね、とすまなさそうに小さく呟く様子がまた更に可愛い。

『ちェー…ヒナタってば…カワイく言われたらダメって言えねーじゃん…ずりーよなァ…』

台所でやかんを火にかけ、沸くのを待ちながら気持ちを鎮める。

しかし、たっぷりとお茶をいれたカップ二つとお代わりを入れた急須を盆に乗せて戻れば、本を開きながらうつらうつらとしているではないか。

「ヒナタ、本読めてねーじゃねェかよ」

ナルトは笑いながらお茶を入れたカップを手渡してやる。

昨日遅くに任務から帰って来てそのままお菓子の準備をしてくれて、それでろくに寝ていないのだろうか。心配にはなるが、そこまでしてくれたことはやはり嬉しい。
なのでソファの隣にではなく、床に座りこみながら、

「寝みーなら横になったらいいのに。」

と言うのに、ヒナタはカップを両手に持ったまま、とんでもない!と激しく首を左右に振るので、

「別にオレは行儀悪ィって思わないけど?」

と笑う。

遠慮がちなだけでなく、だらしがないとか行儀が悪いとかを気にするタチらしい、と気づいたのはつい最近。
またひとつ彼女を知った、と嬉しかった。
だから、ことあるごとに「オレは気にしない。ダイジョーブだからくつろいで?」と伝えるのだ。

ヒナタが首を左右に小さくかしげている。迷っているときの彼女のクセだ。
それも…知ってる…
カップに口をつけながらもこっそり頬がゆるむ。

「さて、お代わりいるひとー」

急須をかかげると、わたわたとカップを差し出してくる。

「ね、ね、オレ、お茶いれんの上手くなった?」

と聞けば、

「うん!とっても美味しいよ…ナルトくん、ありがとう」

と、真っ白な華のように清楚に微笑む。
嬉しくてニシシッと笑えば、ヒナタもますます微笑んでくれる。

家でお茶をいれて飲むなんて。考えたこともなかった。
やってみれば簡単なことなのに、彼女と親しくなるまでは、想像したこともなかった。
ヒナタと一緒に過ごすようになって少しずつ、新しく覚えたこと、出来るようになったことが増えてゆく。
そして彼女がどんな人なのか、発見しては覚えてゆくことが楽しくてたまらない。

毎日がちっちゃな宝探しみてェだ…

小さいけれど、キラキラとまばゆく煌めく宝石の欠を、ちょっとずつちょっとずつ集めては、自分の一番大切なところに注意深くしまい込んでいるみたいだ。

そしてお互い、少しずつ距離を縮めていく。

お茶を飲む。
目が合う。
微笑む。

それを飽きもせず繰り返す。端からみたらバカみたいなんだろうけれど、止まらないのだから仕方がない。

もうお代わりは要らない、とカップを卓袱台に乗せたヒナタがまた迷う仕草をしたので、

「いーから楽にしなってばよ」

と笑えば、やっとソファの肘掛けに頭を預けてゆるゆると横たわった。

寝転ぶヒナタは初めて見る。
読書を再開してしまったヒナタの横顔をこのままじっくり眺めていたいなと思ったが、気付かれれば恥ずかしがって飛び起きるかもしれないからわざと目をそらしてゆっくりとお茶を飲み干した。

「んじゃ、次は紅茶いれまーす、欲しいひとー」

声をかけたが生返事がかえってきただけ。

やれやれ…本に集中しだしたか。

こうなると長いことも知っている。
ナルトはゆら〜りと立ち上がるとカップと急須を持って台所へ引っ込んだ。

残りのページはあとわずか。わざとゆっくり作業する。
ゆっくり、ゆっくり、
お湯を注いで、美味しくお茶をいれた頃に、ちょうど本が読み終わっていますように。
急須も洗って、カップも一度すすいで水をきる。

それなのに…

本を胸に抱えてすやすやと寝息をたてているなんて…。

「しどい…」

ナルトは腕を顔に当てて泣き真似をした。

ポットとカップを卓袱台に置いて床に座り、卓袱台に片肘をついてヒナタの寝顔を眺める。

『よーじん深いんだか、むぼーびなんだか、よくわかんないってばよ…』

横になることは散々迷うのに、なればあっけなく眠りこけてしまうだなんて。

しばらくそうしてぶちぶち言いながら寝顔を眺めていたのだが。

む。
むむ…。
むむむむむ…。

『もしかして…もしかすると…コレは…』

肘をついた手に乗せた頬をぐに、と歪ませたまま、ナルトはすうっと目を細めた。

『センザイ・いち・グゥ!とかゆーヤツなのでは…』

たらり…と汗が流れ落ちる。
ヒナタは規則正しい寝息をたてている。

ナルトはそろり…そろり…と動いてソファへと近づき、用心深くヒナタの顔を真上から覗き込んだ。
わずかに開いた唇が…なんだかとっても美味しそうな果実に見える。

『コレは…もしかして…ちゅーしちまえるチャンス…なのでは!!』

月の宮殿でお互いの気持ちを確かめ合って心を重ね合わせた帰り道、嬉しくて堪えきれず勢いで口づけを交わしたあの初めてのキス以来。

実はあれっきり。

まだ二度目を果たしていないのだ。

いや、したいとは思っていた。ずっとチャンスを狙っていた。
だけど、ヒナタと目が合う度に、髪を揺らして笑顔を向けてくれる度に、ポーッと見とれて動けなくなってしまって…

とにかく!あれきり!全く!

…果たせていないのだ…!

ドキドキと高鳴る心臓を押さえ、ゆっくりと顔を近づける。もうちょっと…あと少し…
気が急くあまり唇を突き出した変な顔になっていることに気づかぬまま、とにかくナルトはヒナタに気づかれないように唇を唇に寄せることだけに集中する。

『ええい!ウルサイ!心臓止まれ!!』

無茶なことを考えながら、全身の血管が膨張しまくったような激しい鼓動にくらくらしてくるのを堪えてまた近寄るが…

………。

『だあぁぁぁぁ!!やっぱり出来ねェエエエ!!!』

ナルトは部屋の隅に飛びすさると、壁に背を張り付けて肩で息をした。

ぜーは、ぜーは、…

顔と言わず全身真っ赤になっているだろうか、全身がじっとりと汗ばんでいて暑くてたまらない。

『オレの…オレのいくじなしっ…』

うぇぇ…と涙が滲むが仕方がない。

『無理なもんは無理だァ…』

ナルトはうなだれながらゆらゆらと立ち上がって…懲りずにまたソファに近寄ると、肘掛けに預けたヒナタの顔の横の床にぺたんと座り込んだ。

『だってさ…だってさ…寝てるとこを襲うなんてさ…ヒキョーだもん…無理だ…ってばよ…』

先ほどまでの息苦しさを思い出せば、また試そうとは到底思えない。

『どーせ苦しいんだったら…ヒナタと一緒に、が、いい…な…』

それでも残念でならなくて、未練がましくヒナタの寝顔を眺め続ける。

『かァいいなァ…こんな顔して寝んのかよ…』

ぷるぷるの唇だけでなく、ふにっとしたほっぺにも触れたくてたまらない。

はむん。

歯をたてずに唇で噛みついてしまえれば。ぷにゅん、とした感触と、なんだか甘くてとっても美味しそうな味が広がるような気がしてくる。

「…ん…」
「!!!?!」

起きたのか?!とびくついたが、ヒナタが微かに声を漏らしただけで、ナルトは浮かしかけた腰をおろしてまたヒナタを見つめた。
わずかな身じろぎでさらさらの髪がこぼれ落ちて細く頬にかかっている。

…………。

こ…これは…

恐る恐る。ナルトはそぉっと手を差しのべた。

『これは…これはヒナタの髪を…どけるだけだから…!だってホラ!邪魔そうだし…!だからだからーッ!』

なぜか歯を喰いしばって震える指先をそぉーっと差し出して、
ナルトは細心の注意を払って、ヒナタの頬にかかる髪だけに触れようとした。しかし。

ちょこん。

『ひゃあぁあああああ!』

当たった!当たっちまったァあああああ!

飛び上がりそうになるが、それは出来ない!ヒナタを起こしちまう!そう思いながらわずかに触れてる指をどかすこともせず、ナルトは声を出さずに大口を開けて慌てた。

そっ…。

ようやく離し、呼吸を整える。再び…とヒナタを見ると、

『でェエエエエエーッ!やっちまったァぁあああ!』

先ほどのせいなのか、頬にかかる髪の量が増えている。

『これはッ…!指先とゆーより…指で…しなくちゃなンじゃあ…』

ゴクリ…

かつてこんなにも緊張してことに当たったことなどあっただろうか。

『いや。ナイ。』

そろり…そろり…慎重に…慎重に…

ナルトは自分が息を止めていることにも気づかないまま、じりじりとヒナタの頬へと手を伸ばした…


* * *

「………?!?」

ぽやん。と目を開けたヒナタは、すぐに自分が眠りこけていたことに気付いて飛び起きた。

『わ、私ったらいつの間に!ごめんなさい、ナルトくん!』

顔を真っ赤にして慌ててナルトを探して辺りを見回したが、どこにも見当たらない。

『どうしよう…きっと…呆れて…』

きゅっ…と唇を噛み締めたヒナタの目にうっすらと涙が浮かびそうになったとき、

「う…うう…」

呻き声が聞こえ、ハッとして見下ろすと。

ソファの側で、ナルトが右手をびん!と伸ばした姿勢のまま不自然に身体を捻って転がっているではないか。

「ど、どうしたのっ?!ナルトくんっ!」

ヒナタはすぐにソファから降りてナルトの横へ座り込んで助け起こそうと背中へ手を添えた。

「うあ…ヒナタ…済まねェ…」
「どうしてこんなことに…?ナルトくん、身体が固いのに無理したの…かな…?」

つってしまった背中の筋肉をほぐすようにさすってくれるヒナタに、

「ェ…まァ…そんなトコ…」

それ以上は聞かないで!という気持ちを込めて、ナルトはヒナタに涙目を向けて苦笑いをした。

ようやく身体を起こすことが出来たナルトは、もう大丈夫!と示すために身体を捻ったり腕を回しながらニカッ!と笑ってみせた。やっとヒナタがほっとした顔をしてくれたので、ナルトは嬉しくなって、

「んじゃさ!お菓子食べよ?ヒナタが作ってきてくれたやつ〜♪」

勢いよく立ち上がりながら言ったので、ヒナタも慌てて立ち上がり、

「きゅ、急に動いて大丈夫?ナルトくん…っ!」

ナルトを支えようと、くん!と伸ばした両腕に自分がバランスを崩しかけ、

「おわァ!」
「ひゃっ?!」

過剰に反応したナルトが慌ててヒナタに向き直り、しっかりと抱き締めた。

「?!」
「♪」
「ご…ごめんなさ…」
「いやいや♪大丈夫か?ん?」
「た、大丈夫です…っ」

至近距離から顔を覗き込まれてヒナタが恥ずかしがって目をそらすと、ナルトはパッ!と腕を外し、くるり!と背を向け、

「ほんじゃ〜ゼリーちゃんを取ってこよ〜ッ♪」

スタスタと台所へ行ってしまったので、ヒナタはなんとなくほっとして髪を整えながらソファに座り直した。

『ね…寝顔見られてたのかな…へ、変な顔…してなかったかな…』

結局は読み終えてなかった本の続きはもう読む気になれず、ヒナタはそれを膝においてモジモジと思い悩み始めた。

ナルトはといえば、

『あっ………ぶねェエエエエエ!』

流しに両手を付いて思いきり目を見開いて気持ちを落ち着けようとしていた。

『抱き締めたり!抱き締めたりとかして!オレ!ヤベェだろ!!』

ひゃああああ!と声にならない悲鳴もあげたが、ふと。

『ん?待てよ?』

やかんを火にかけながら首を捻った。

『抱き締めるのは別にいーじゃんか。何がヤベくてあぶなかったんだろ?』

紅茶やお皿の用意もする。

『ウン…抱き締めんのは…いいよな?別に…』

気持ちが落ち着いてきたようだ。
お湯をそそぐといい香りが昇り、ますます気持ちが落ち着く。
すべてを手際よくお盆に並べて振り向けば、

ソファには彼女が座っている。

卓袱台しかなかったこの部屋に、彼女が来るようになってから買ったソファに彼女が居る。
彼女のためなのに、ちょっとだけ居心地悪そうに恐縮して座っている様子が可愛くてたまらない。

なんて幸せなんだろう…!

合図を送るようにお盆をちょっとあげてみせれば、花がほころぶように彼女が笑う。

ナルトは上機嫌で卓袱台の前に座り込むと、支度を整え始めた。ヒナタもソファから滑り降りるとクッキーを袋から出してお皿に並べてくれる。
ナルトが箱からそうっと出してくれたゼリーには小さなスプーンを添えて。

「うっし!」

カップに紅茶をいれ終えたナルトは、腰に手を当てて満足げにニンマリとした。
ヒナタもぱちぱちと小さく手を叩いてくれた。

「さ、食べよっか!」
「うん…!」

にこにこっと微笑み合う。
どれから食べようか…ナルトが迷っていると、ヒナタの白い指がすうっと伸びてきて、ゼリー器を持ち上げた。ナルトがつられるようにそれを見ていると、もう片方の手がスプーンを摘まみ、

ぷにゅ…ん…!

「わぁ…♪」

やわやわとしたゼリーにスプーンを、つい…と差し込み、ひとさじすくいあげた。

「よかった…ちゃんと元通り…!このね、この、固すぎないように仕上げたくて…!よかったぁ…」

ヒナタが彼女らしく控えめにはしゃぐたびに、スプーンの上でゼリーの欠片が、ぷる…ぷるる…と揺れている

半透明のゼリーが…煌めきながら、ぷるん…ぷるる…と…

ごっきゅん!

知らぬ間に大きく鳴った喉に、跳び上がりそうになったナルトはぐっとそれを堪えたが、
目はヒナタのスプーンに釘付けになったまま逸らせなくなっていた。

いや…

『ヤバい…ヤバい…なんかしんねーけど、なんだかとにかくスッゲーヤバい!!』

くわっ!と目に力を入れて意識してスプーンを見つめ続ける。

ヒナタを見ちゃダメだ…ヒナタを見ちゃダメだ…頭の隅からぐわん!ぐわん!と鳴り響いてくる警鐘にぐぐぐっと従う。嗚呼…それなのに!

ふるるるる…揺れるゼリーはまるでその艶やかで透明な眼と…そして…そして…
先ほど釘付けになっていたあの柔らかそうな唇と…きっと同じ感触のような気がして、

『ヤバい!!!!』

思わずナルトはぎゅっと目をつぶった。そうしたらこのこみあげてくるものを抑え込めると思ったのに!

「ナルトく…ん?」

あまりにも心配そうなヒナタの問いかけの声の小ささに、ハッとなって目を開けると、スプーンを少しだけあげて首を傾げて心配そうな顔をしているヒナタのその仕草のあまりの可憐さにうっかりポーッと見とれてしまう。

なんて可愛い、オレの彼女!

だがその手には、きらきらと輝きを放ちながら甘い甘いゼリーが微かに揺れているわけで…

「あ…」

いつまでも動かないナルトを訝しがりながら、ヒナタが仕方なしに手にしたゼリーをぱくん、と口にした。
ふるふるとしたゼリーがつやつやとした唇に吸い込まれていくさまを引き込まれるように見つめてしまったナルトは、たちまち顔を真っ赤に染め上げてしまい、

『うあァァァアアアアアアアア!』

声を上げずに叫ぶと頭を抱えてしまった。

『ゼリー!無理!今日のオレには無理だってばよーーーーー!!!』

あれを食べてしまったら!ぷるりとした感触が、ふるふると喉を通っていく度に、そして同じ動作を繰り返すあの薄い桃色の唇が、それを迎え入れるために何度も何度も…何度もーーー!!!オレの隣でェエエエエエエ!!!

「オオオオ、オレっ!今日はクッキーだけでいいです!!!」

ガッ!と乱暴にクッキーをひっつかむとバリバリと乱暴に咀嚼し…。


・・・・・・・。


そのままベッドにもぐりこんでそれきり顔を合わせてくれなかったと、半べそのヒナタからやっと話を聞きだしたハナビがものすごい勢いで乗り込んできたのは、この数日後のことでありました…!



おわり