8月1日[花火の日] | ナノ
 



「トモっ、早くしないと終わっちまうだろっ」

「そっそう言われてもっ、浴衣は走りにくいん、だよっ」


型抜きに夢中になっていたらこの祭りの一大イベント、打ち上げ花火が始まってしまった。
最初はまだまだ時間があるってりんご飴を買ったり射的をしたりしてたのにいざ型抜きをすると何回も途中で割れて白熱してたら不意に空が明るくなった。
別に型抜きの屋台からも見えるんだからそこで見てれば良かったのにアキラに手を引かれて境内へと向かって走ってる。
何でも穴場らしい。
向かってる最中に終わらないと良いけど。

「はぁ、着いたっ。トモ、見ろよっ」

「はぁっ、はぁっはぁっ」

境内に着く頃にはすっかり息が上がって汗が肌を伝う。肺が痛い。
前屈みで膝に手をついて呼吸を整えてるとアキラに肩を叩かれた。
まだ息が整わなくてしんどいけど顔を上げた瞬間、目の前いっぱいに花火が咲いていた。
祭りの会場よりも高くて町が見下ろせる程高い境内から見る花火は格別だ。
こんなに綺麗な花火は見た事がない。
疲れなんて忘れてしまうぐらい。

「す、ごい…」

「だろ?トモと見たかったんだよ」

「俺と?」

こいつはまた何気無く言うけど俺にとっては凄く嬉しい。
礼を言おうと振り向いたら唇に柔らかいものを感じた。
俺は食べてないなのにほんのりとりんご飴の味がした。

「…トモ、あのさ、俺と付き合ってくれない?」

「えっ…」

言い終わった時に一つまた一つと空に花が咲いていく。
光に照らされた顔は俺と同い年の筈なのに凄く凛々しい。
真剣な表情が凄く格好良かった。

「…喜んで」

打ち上げられる花火に掻き消されてしまう程小さな声で言ったのにアキラは嬉しそうに笑った。
そっと手を握って自然と唇の距離を縮まる。
空に打ち上げられる花火がまるで俺達を祝っているような錯覚に陥った。


夏休みは始まったばかり。
今年の夏は楽しくなりそうだ。



back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -