「千尋ってほんとにピアノ上手いよね」
「そうか?」
「うん。少し癖あるけど俺は好きだよ」
「……似合わないだろ。俺みたいな喧嘩に明け暮れてたでかい男がピアノなんて」
「でも好きなんだろ?」
「それは…」
「好きな事に似合う似合わないなんて関係ないって。俺だって似合わないけど歌うの好きだし」
「燈瑪の声は、癒されるから良い」
「それを言うなら千尋のピアノだって千尋みたいに力強いけど優しいから良いんだよ」
「……」
「自分が好きな事なんだからさ、胸張って良いと思うよ。そのギャップも桜慈なら萌えーとか言うはず」
「桜慈なら言いそうだな」
「それに少なくとも俺は千尋のピアノのファンだよ」
「そうか」
「あ、あの曲弾いてよ。前に聴かせてくれたやつ。歌詞覚えたから一緒に合わせよ?」
「ああ」
「千尋、ありがと」
それは俺の台詞だ。
こいつに出会えて、本当に良かった。
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