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今日の帰り道、私はどうやら土方先輩に告白されたらしい。

『付き合え』なんて命令口調の告白だったけど、そういう台詞は得意じゃなさそうな彼らしい言い方だと思った。

でも、やっぱり土方先輩にも、他の四人と同様に考えさせてくださいとしか言えなかった私は本当にどうしようもない女だ。

沖田先輩と斎藤先輩に至っては、もう二週間も返事を先送りにしてしまっている。

このままだと、自然に時間が元の関係に戻してくれるかもしれないけど、

こんな私でも好きだと言ってくれた二人に、それはあまりにも失礼すぎる結果だ。




「あ、そう言えば、今日の夜に莉奈ちゃんとメールしようって言ってたんだった…」

私は、ご飯とお風呂を済ませた後に部屋に戻ってベッドで寝転んでいると、今日学校で莉奈ちゃんと話していたことを思い出す。

携帯を学校の鞄から取り出して、開いて見るとそこには一件の不在着信。

莉奈ちゃんからである。




プルルルルル




私は掛けなおして見ることにする。




プツッ




『もしもし、梨乃?』

「莉奈ちゃん?どうしたの電話掛けてたみたいだけど…」

『今日メールするって言ってたじゃない?でも、メールじゃなんだし電話で聞いてやろうと思って掛けたんだよね』

「ごめん気が付かなかった…お風呂入ってたからかな…」

『まぁそれはいいんだよ。んで、何か心境の変化はあった?』

「心境どころか、状況もまた変わっちゃったよ…」

『へ?』


私のさらに困ったというような声に、莉奈ちゃんは素っ頓狂な声を出す。

そんな莉奈ちゃんに、今日また新たに告白してきた三人のことを話した。




『はぁ…なんかすごく大変なことになったね。サンドイッチどころじゃなくなったみたい』

「サンドイッチでも大変だったんだよ。莉奈ちゃん、私どうしたらいいかな?」


本当はこんなこと、人に聞くべきじゃないんだろうけど、

私は莉奈ちゃんに泣きついてしまう。

なにせ、中学の時は告白されたことなんて一度もなかった私が、この二週間で五人からも告白されたんだから。

こんな状況になれば私じゃなくても混乱してしまうというものだ。




『それは梨乃が決めることだから、私には誰にしろとか全員振っちゃえとか言えないけど…
本当に梨乃の中では、誰も決まってないの?
本当はこの人と付き合いたいって人、いるんじゃないの?』


莉奈ちゃんの言葉に私は、心に何か重いものが圧し掛かるのを感じた。

莉奈ちゃんは、私以上に私の気持ちを見抜くのが得意なのかもしれない。

まだ知り合って三ヶ月も経ってないのに。




『本当はずっと心のどこかでいいなって思ってた人いるでしょ?
私だったら、あんなイケメン五人に囲まれて過ごしてたら、その中の誰も好きにならないなんてありえないと思うけどなー!!』


前言撤回。

ただの面食いだった。

でも莉奈ちゃんの言葉は、私を確実に答えへと導いてる気がする。




『本当は心に思う人が一人いるけど、その人だけと付き合うと、今までの皆との関係が崩れて行きそうで怖い…なんて思ってるんじゃないの?』

「……」

『もしそうだとしたらね、それは梨乃次第なんじゃないかって思うよ。
今までの関係を崩す覚悟で皆は梨乃に告白してくれたんだから、梨乃がそれを怖がっちゃ駄目だよ。
梨乃が本当に想ってる人一人とちゃんとお付き合いをして、
ごめんなさいしてしまった人にも、これからも今までみたいに仲良くしていたいって伝えてみるのが一番じゃないかな?』

「莉奈ちゃんはエスパーですか?」

『今まで梨乃の色んな話を聞いてきてた私は分かるよ。梨乃が誰のことが好きなのかもね。多分自分ではまだ好きってことに気付いてないんじゃないかって思ってたから言わなかったけど』


私は本当にいい友達を持ったと思う。

私が嫌がらせされないか、早起きして学校に来て確かめてくれたり、

今こうやって、私の話を真剣に聞いてくれて、

そのうえ、私に、私でさえも気がつかなかった本当の気持ちに気付かせてくれて…




「莉奈ちゃん、ありがとう!大好きだよ!!」

『なんだよ、照れるじゃんか。…頑張んなよ?』

「今から、少し出てくるよ。明日また報告するね?」

『うん、待ってるよ。じゃあ明日ね』

「ありがとね、また明日」




プツッ



ツーツーツーツー




莉奈ちゃんとの電話を切った私は、時計を見た。


21時少し前。


門限の22時まであと1時間と少しある。





私は、パジャマだったのを急いで普段着に着替えて、ある人物のところへ向かった。









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