重力に逆らわずに真っ逆さまに落ちていくさまをげらげらと腹を抱えながら笑っていた。およそ普段の慎ましやかさなどなく、いったいどこに置いてきたのかとつい聞きたくもなったがやめておいた。楽しそうな面が気にくわないので、勢いに任せてリノリウムの床を蹴ったら思ったより音がして、また笑われた。
そもそも自分の携帯を窓から放り投げて何がおかしいのか、理解ができない。元より変わった性格だったけれど、ますます分からなくなってきて頭をかく。笑い疲れたのか肩で息をしながら俯く臨也の、周りより少しだけ長めのプリッツスカートから覗く白色が夕日の橙と上手い具合のコントラストを見せる。
浮わついたような気分になりそうで目を逸らした。あいつがスカートを少し長めにはいている理由は、とてもくだらない。思わず納得しそうになったあの頃の自分を殴りたい。
視界の隅で影が揺れた。携帯を落とすだけの遊びにあきたのか、あいつはそそくさと黒板がある教卓の方向に向かっていった。影を目で追っていた俺はあいつが教卓に乗り上げていたことに気づくまでに少し時間がかかり、はっとした頃には教室に少し大きな影がさしていた。
「何やってんだ」
「今日はシズちゃん、優しいね」
そう言って、また可笑しそうに腹を抱えた。失礼な奴だ殴ってやろう、地を蹴ったら臨也は思った通り逃げた。
追いかけようと思ったのに止まってしまう。いったい俺たちは、なにをやっているのだろう。
不思議そうに振り向いてきたあいつの背中に何かが見えたような気がして、届くわけでもないのに腕を伸ばした。


いきはよいよい
(:20110923)
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