子供に手を出したら犯罪だろうと、さも当たり前のことを当たり前のように言われて、その自然さが逆に奇妙さを煽った。彼の言うことは尤もで、自分達に果たして法律という規律が正常に機能するかどうかは、まだ世の中に疎く幼い自分にはっきりしたことは言えないが、少なくともモラルの問題としてその通りだということは分かる。
だがしかし、
「今更ですか?」
自分の疑問も、また極自然なものであった。
「なんだ、お前は私を犯罪者にでもしたいのか」
「それこそ今更……あ、いえ何でもありません」
子供に手を出す、という行動の定義をどこにするかによって、この大人が罪を犯しているかそうでないかががらりと変わってしまうことを、自分は知っていた。
だからこそ、あえて声を上げる。
「あれだけ人に欲情しといて平然と言ってのけるあたり、森次さんもなかなかいい性格してますよね」
「自覚があったのか」
「そりゃあ……………」
「どうした?」
「……なんでもないです」
自分で言っておいて後から思い出し羞恥に頭を抱えるあたり、やはりまだ子供なのだと突き付けられる。火照る顔を隠すようにそっぽを向く仕草もいじけた子供のようで、やってからしまったと思う。
結局自分は侮られたことが悔しかったのか、それともまだ手は出さないと言われたのが悔しかったのか。
どちらにしても彼がその鉄面皮の下に隠した真意は、完全には察せないことに苛立ちを覚えたのは確かだった。


おとなはずるい
(:20131211)
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