『光が誤解したことで、みんなに光を誤解されたくない』
それを聞いた時、耳を疑ってしまった。予想以上に彼が光のことを気にかけてくれている事実に、何故だか現実感が追いついてこなかったのだ。見かけによらずなかなか情に厚い奴なのかな、その時はそれで終わらせていた。紡の気持ちと自分の気持ちは同じだったからだ。
でも、次第にその考えは変わっていった。
自分が抱いているものと彼が抱いているものの相違に感づいたのは本当に偶然だ。自分でもよく気がついたものだと不思議だったけれど、最近ではわりと紡の方が分かりやすかったからなのかもしれないと思うようになった。あの水平線のように真っ直ぐな瞳は、わりと彼の内心を顕著に教えてくる。そんな視線を始終向けられてあんなにも平然としていられる光は、やはり鈍感だと言わざるを得ないだろう。
初めはそれこそ驚きばかりだったけれど、時間が経つにつれそれも薄れ、今あるのは純粋な好奇心。何をするにもストレートな紡にしては珍しく、あまり目立つように好意を見せない彼はこれからどうするのだろうか。そしてそんな紡の好意にもしも光が気がついた時、光はいったいどうするのだろうか。
特に光は鈍感なくせに、嫌なところで体面を気にする奴だから尚更。
(一肌脱いであげますか)
ここで紡に恩を売っておくのも悪く無いだろうと要は意地の悪い笑みを浮かべる。
不器用な二人が歩みを共にする光景を、彼は一人静かに待ち侘びた。


しかたがない
(:20131031)
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