訳もなく兄貴が触れて来る時っていうのは、だいたいいつも何か溜め込んでる時。爆発できない鬱憤をどうにかはらそうとした苦肉の策。指先からじわじわと侵食してくる熱は、夏の茹だるような熱さとも激しく燃え上がる炎の熱さともどこか違う。俺自身を飲み込んだ後がまるで想像の付かない、恐ろしいもの。
怖いのなら離れればいいのに、拒みきれずにただされるがまま。瞼にぎゅっと力を入れて、せめて触れてくる兄貴の表情は見ないでおこうとする。予感が告げるのだ、きっと兄貴を捉えてしまったら最後、そんな風に。
頬を辿るように撫で付ける手に、ざわざわと煩く騒ぎ立てる心臓。今にも鼓動があちらに聞こえてしまいそうなくらい、これでもかと音をたてる。早く終わってしまえばいいのに。
でも不思議なことに、心のどこかではこの接触を待ち望む自分もいる。兄貴の熱を孕んだ瞳に捕らえられてしまいたいと望む自分が。こんな気持ちは生まれて初めてで、授業で習わないどころか誰も教えてくれない。
理解不能な領域に片足を踏み入れてしまい、それはまるで底なし沼のようにずぶずぶと自分を飲み込んでいく。得体のしれない恐怖、と同時に湧き立つ渇望。俺は、与えられたいのだ、明確な何かを。それも、最愛の家族である兄貴から。
こんな自分を知られたら、卑しい者だと軽蔑されてしまうだろうか。それとも、――
「カゲロウ」
はっと我に返る。反射的に瞑っていた瞼を上げれば、痛いほど差し込んでくる光と迫りくる影。
「ごめんね」
奪われるように重ねられた唇から伝わる温度は、嫌に生々しかった。


ほんねかくして
(:20131023)
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