爪先まで眺めていると、ついその細さに驚く。多分全然そんなこと顔には出ていないんだろうなあ、まあいいか。零崎はびっくりするほどに女性というカテゴライズに当てはまった。むしろ出会った当初意識しなかった自分自身に驚いたぐらいだ。くるくる、くるくる、一見危なっかしそうに指先で回すナイフの軌跡を辿れば、アンバランスすぎる組み合わせに目を奪われそうになったりそうじゃなかったり。
零崎はよく分からない。
「いーたん、視線がやらしい」
「そんなことない」
「いやあるねー」
夢中になっていたのがばれたのか、それでもさして焦る様子は見せないように返した。いや実際焦ってなんかいない、嘘だけど。
まあいいや、と興味を失った零崎はまた指先でナイフを弄くって遊ぶことに没頭する。それしか趣味がないのかと言いそうになったが、そういえばこんな狭い空間でできることといえば相当限られる。
「いーたん今一瞬エロいこと考えた?」
「…考えてない」
そういえばここは壁が薄かっただなんて、考えてない。


唇から飽和
(:20110822)
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