※ED後


ファナンの海辺から臨む景色。初めて見たあの日からの思い出を砂浜をゆっくりと思い出しながら、季節があの日から二つ過ぎた今を顧みる。
まだまだ未熟そのものだと、それこそ耳が痛くなるほど兄弟子である彼は言ってくるけれど、だが着実にあの頃よりも成長したと自分は自負している。でなければこのファナンに再び訪れた理由に説明がつかない。
今日ここに自分がいるのは、正式な蒼の派閥の一人として総帥からの言伝を金の派閥の議長に届けるためだ。周りの人間も、少しずつ自分を認めてきてくれている、その証拠だ。

生きたいと、この世界で生きていきたいと強く願っている。
例えそこに過去の因縁が存在したとしていても。受け入れて、前に進んでいきたいと確かに願っている。
だからここにいる。どうしようのない現実と直面しても、乗り越えて生きる強さに変えた。あの日手に入れた平穏は、ちゃんとここにある。
忘れることなど決してないさと、兄弟子に向かって宣言したりもした。呆れ半分に笑う彼もまた忘れはしないと、小さく呟いたのを覚えている。
「マグナ」
呼ぶ声に振り向き、向こうから近づく姿に頬を緩める。
「そっちももう終わったんだ、ネス」
「ああ。君も、順調にいったみたいだな」
「まあね。意外とやるだろ?」
「これくらい卒なくこなして当然だ」
はにかみながら得意げに言えば手厳しい一言が飛んでくるのはもはや当たり前のこととなっている。昔を懐かしがっていたこともあり、それが妙にくすぐったかった。
「何を笑ってるんだ」
「ううん、別になんでもないんだ。――帰ろうネス、聖王都に」
「ああ、総帥が返事をお待ちかねだな」
「うん」
未来に不安が無いわけではない。
それでも自分達はきっと、かけがえのない何かを残し続けていくんだと信じてやまない。
だから今日も、前へと歩き続けられる。


ここにあるもの
(:20120407)
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