新宿に夜が訪れると共に奴はやってくる。息を潜めても必ず見つけ出され、食い潰される。そして朝の訪れを察知すると寝床へと帰っていくようだ、どこの野獣かと吐き捨てる。
癒えぬ身体を引きずり、俺は街に出る。法螺を吹き、笑みを重ねる。
奴の縄張りにあえて近づき、挑発しては捕まるすんでのところで逃げ延びる。まあまた夜には捕らえられてしまうので、あまりこのことに意味はない。その繰り返し。
今度の夜は、少し違った。
「何で逃げねぇ」
何故? 何故だって?
お前が、お前が逃さないからだろう。お前が見つけてしまうからだろう。
俺はこんなに必死に逃げているというのに。
「全部シズちゃんのせいだよ」
赤く染まった頬が痛い。腕は力強く掴まれ、みしみしと悲鳴をあげる。
もうこんなにも、限界だと訴えている事実から目を背ける。
化物なんて、いなければよかったのに。
ゆめからさめる
(:20130212)