※カラバリNO.5ジン×NO.3ノエル(CP基準)


「夜風はお身体に障ります、ジン様」
少女の聞き慣れた、凛とした声音が月明かりの下の、静けさばかりに包まれた一室によく響いた。ここからでは彼女はまだ暗がりにいてよく捉えづらく、静かにその場に佇んで待つことにする。
「うん、ごめんね。ただどうしても、空が見たくて」
「空、ですか」
「うん。ほら、今日は星も綺麗なんだ」
すぐ隣までやってきたノエルに、ジンは空を指差し言う。煌々と輝く月の周りに視線を向ければ、確かにそこには無数に煌めく星の姿があった。
「本当だ……」
感嘆の声を上げるノエルに頬を緩ませたジンは、そこでふと彼女の頭にいつもの帽子が被されていないことに気づく。
長く伸びた桃色の艶やかな髪の毛は月の光で持ってまたさらに美しくジンの瞳に映った。
「――髪の毛、」
一房掬い上げ、その滑らかな感触を楽しむ。素直に綺麗だと思えた自分に、あのオリジナルとはまた違った点を見つける。
あるいは、あのオリジナルにも本来ならば存在するはずのものかもしれないが、自分は彼とは似て非なる者でしかない為わからない。
「ノエルは、下ろしていた方がいいな」
穏やかな微笑を貼り付け、真意を悟られぬようひた隠す。恥ずかしそうに頬を赤く染め俯く彼女に僅かな罪悪感が生まれた。
「あ、ありがとうございます……!」
「いつもそうすればいいのに。可愛いよ、きっと」
「い、いえそんなことは」
「ノエルはもっと自分に自信を持っていいんだよ」
もしかしたのなら、彼が彼女に言うべきだった科白。出来損ないの口から放たれたことによって、ほんの少しの可能性もなくなってしまった。
「ジン様……?」
心配そうにこちらを覗くノエルに気づき、振り払うかのように考えを彼方へと捨てた。


(嗚呼、なんて卑怯な贋作か)


あの日の少年が死んだ
(:20121223)
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