触れる柔肌の甘美な味を知らないわけではなかったが、溺れると分かっていても口付けずにいられなかった己の浅はかさをハザマは静かに嘲笑う。
圧倒的な白は何に混じって染まるということもなく、その気高さをいつも保ったまま。何人が触れようと穢れることもなく、艶やかでいて孤高の子どもが存外嫌いではなかった。
むしろ見るたび見るたびに惹き付けられ手を伸ばさずにはいられない。漂わせる官能的な香りにどうにかなってしまいそうだと、戯言をこぼしたりもした。何の冗談だと一蹴されてばかりではあったが、ハザマは自分のこぼした一言が彼に与えたものに気づいていた。
気まずげに、それでいて恥ずかしげに逸らされた二つの瞳が揺れ、赤く色づく頬を見逃したりはせず、己の口元はゆっくりと弧を描く。

──嗚呼、美しい。

喉の奥が鳴る。食らい付いてしまいたいと騒ぐ。きっと食い散らかしたとしても気高くあり続けようとするその魂。四肢、頭から足先まで全て。
ジン=キサラギを構成する全てのパーツ、そして彼が彼たる所以、意思。それらに目を奪われる、思考を埋め尽くされる。
なんともまた、厄介でそれでいて愛しい人だろうか。
「貴方に触れることができるだなんて、まるで夢のようですね」
囁く、出来るだけ甘く。甘さだけを十分に孕んで放つ。
「……煩い」
「今日は、馬鹿な奴だとは罵らないのですか?」
「……何を期待しているんだ、貴様は。被虐趣味にでも目覚めたか?」
「いえ。ただ、あまりにも物珍しかったもので、つい嬉しくて」
「うるさい、もう黙れ」
「ああ、すいませんお喋りが少し過ぎましたねぇ。……それでは、」

“貴方を頂いても、宜しいでしょうか?”

腹の底には舌舐めずりをして今にも飛び付かんとするもう一人の“ケモノ”。
さてさて、待ちわびた御褒美の味や如何に。


あの切っ先に似ている
(:20121215)
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