※学パロ
※九十九屋が喋らない


眠気を誘発するもの。一に日差し、二に日差し。
そんな感じに、太陽がうまい具合に南の方角へと移動しきる午後の時間帯。もちろん世の学生は誰しもがまだ勉学に勤しむ時間帯であり、これは俺自身もまた例外ではない。
まさに今、黒板に白々とした字で書かれていく年表やら概要やらを、罫線で区切られた白紙へと律儀に書き込んでいる最中だ。
時折日本史教師による退屈な閑話なども挟まれ、口からはひっきりなしに欠伸が零れていた。
鈍ってきた脳の回転に若干危機感も抱きもしたが、暗記物であるこの教科はあとで教科書でも確認しておけば、テストやらで困ることは一つもないと考え直ぐ様その危機感を思考の外へ投げ捨てる。
就寝時間が特別遅かったわけでもない。なら何故にこんなにも眠気が酷いのかと言われれば、先述した通りこの容赦なく降り注ぐ暖かな午後の日差しのせいだ。
秋も深まるこの頃の肌寒さも相まってか、余計に気持ち良く感じてしまう。
三大欲求の一つであるものに抗えるはずもなく、徐々に重力に従い落ちていく頭。これはこの後の授業もろくに受けられはしないなと、寝ぼけた脳みそで直感する。
ふと、自分の前方に視線をやる。真っ直ぐに深緑の板と向き合う、少し色の抜けた天然パーマの頭。
(真面目に受けてるのか、真面目に受けてる“ふり”をして楽しんでるのか…)
九十九屋真一。同級生であり知人である奴の姿は、はたから見れば優等生そのものなのだろう。ただ、奴の本質はそんな優しいものではない、経験者は語る。
忌々しいあののほほんとした表情を思い浮かべて気分が悪くなった。
せっかくの昼寝が台無しになろうとしている、他ならぬ九十九屋一人だけのせいで。
(…シャーペンで刺してもいいかな、背中)
苛々とした感情を奴だけのせいで抱いてしまったことに腹立たしく思い、報復に八つ当たりでもしてやろうかと企てた。
その間もなお降り注ぐ太陽の光。窓際に近い席というのは何かと厄介だなと、今年初めて思った。
恨めしそうに見る背中はぴくりとも動かない。それを面白くなく感じ、とうとう耐え切れなくなった睡眠欲に従ってしまうと視線を黒板から少し落とした。
(あとでノート、奪ってやろう…)
起きた後の計画を画策し、恨みがましく思う九十九屋の背中を最後に見ながら抗うことなく瞼を下ろした。


(:20111214)
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